目次 †
コンプライアンス †
コンプライアンス(compliance)とは、「法令遵守」(法令順守)と訳される。しかしながら、コンプライアンスという言葉は法令のみに限定して使われているわけではない。法令だけでなく、道徳・倫理といった法令以外のルールも必要不可欠な存在であり、それぞれを順守することがコンプライアンスである。
コンプライアンスと企業倫理 †
企業倫理 †
企業倫理とは、一般に企業がビジネスや組織運営を行う上での「基準となる考え方」のことである。コンプライアンスの観点からは、単に企業側の都合によって導き出すのではなく、「社会から信頼され、様々なステークホルダーと共存しながら企業を発展させる」という客観的な観点から導き出す必要がある。
企業を取り巻くステークホルダー †
企業は自社のコンプライアンス規定を策定する場合に、対象とするステークホルダー(利害関係者)ごとに策定する。その際、企業にとってステークホルダーとなえりえる者は次の通りである。
- 株主
- 株主こそが会社の実質的なオーナーである。
- 商法や監査特別法などの法令に基づき、経営情報の公開や適切な権利行使の機会を確保するといった、株主権に配慮したコンプライアンスの策定が必要。
- 取引先
- 企業にとって取引先(顧客)からの信頼確保は不可欠である。
- 民法や商法はもちろん、業態別の各種業法や消費者保護に関する法令に基づくコンプライアンスの策定が必要。
- 自社の従業員
- 従業員あっての企業である。
- 適正な労働環境の維持は、企業発展のための重要な要素である。
- 労働法令を遵守したコンプライアンスの策定が必要。
- 地域住民
- 国内外を問わず、事業所や工場に対する周辺住民や地域行政の理解・支援は重要。
- 環境法令や地域条例に基づくコンプライアンスの策定が必要。
- 消費者
- 競争企業
- 行政
- 投資家
コンプライアンスにおける企業倫理 †
コンプライアンスにおける企業倫理とは、社会的責任に照らし合わせて「公正かつ適正な経営を行うための企業内活動」のことであり、「社会から信頼され、共感を得られる経営による企業の発展」と、そのために「企業人・社会人として求められる価値観や倫理観に基づき、誠実な活動を行う」という両方の意味を持つものであることを要する。つまり、こうした観点から策定されたものでなければならない。
コンプライアンスに関する問題 †
- 顧客との関係
- 売上成績を上げるために、顧客に無理やり商品を購入させてしまう。
- 株主との関係
- 株主総会を穏便に終わらせるため、特定の株主に利益供与をした。
- 競争企業との関係
- 同業企業が申し合わせて、販売価格や入札価格を決めている。
- 従業員との関係
- 残業代を支払わない。
- 昇進などの待遇面で女性を不利にしている。
- 行政・政治との関係
- 義務付けられている報告を怠る。
- 政治家にヤミ献金をしている。
- 地域・社会との関係
- 廃棄物を不法投棄をしている。
- 反社会的な団体に寄与・支援している。
コンプライアンスに関係する法令 †
- 契約や取引に関する法律
- 民法
- 契約による債券・債務や物権の取得といった権利関係に関する一般法
- 消費者契約法
- 事業者との情報量や交渉力等の格差から消費者を保護する民法の特別法
- 特定商取引法
- 特定の商品・販売方法から消費者を保護する民法の特別法
- 製造物責任法
- 製造物の欠陥に起因した損害について製造者責任を定めた民法の特別法
- 会社の運営や組織運営に関する法律
- 会社法
- 会社の設立、株式(株主)、組織運営について規定した基本法
- 商業登記法
- 会社法上で義務付けられている商業登記手続について規定した手続法
- 雇用に関する法律
- 労働基準法
- 労働者の生存権を保証するため、労働条件の基準を定めた法律
- 男女雇用機会均等法
- 男女の均等な雇用機会および待遇の確保を事業主に求めた法律
- 労働関係調整法
- 労使関係の調整を図り、労働争議の予防や解決を目的とした法律
- 労働者派遣法
- 労働者派遣事業の適正な運営と、派遣労働者の就業条件の整備を目的とする法律
- 公正な競争と取引に関する法律
- 独占禁止法
- 公正で自由な競争を促進するため、企業活動の基本ルールを定めた法律
- 景品表示法
- 消費者利益の確保のため、広告表示や景品付販売のルールを定めた法律
- 不正競争防止法
- 不正競争の防止や不正競争に係わる損害賠償に関する措置を定めた法律
- 証券取引法
- 知的財産に関する法律
- 特許法
- 発明者に特許権を付与し、その権利保護と利用について定めた法律
- 実用新案法
- 実用新案の考案者に実用新案権を付与し、その権利保護と利用について定めた法律
- 商標法
- 商標を保護し、その使用者の業務上の信用維持を図るための法律
- 意匠法
- デザイン等の創作者に意匠権を付与し、その権利保護と利用について定めた法律
- 著作権法
- 著作者の保護およびこれに隣接する権利を定め、その保護を目的とする法律
- インターネット取引に関する法律
- 個人情報保護法
- 個人情報の保護に関する事業者や行政の責務を定めた法律
- 電子契約法
- 消費者の誤操作による契約を無効とし、契約成立時を到達主義とする民法の特別法
- 迷惑メール防止法
- PCや携帯電話へのスパムメールを規制するための法律
- 不正アクセス禁止法
- 認証情報の不正入手によるコンピュータ不正利用を禁止する法律
- プロバイダ責任制限法
- インターネット上で権利侵害があった際にプロバイダが負う損害賠償責任の範囲と、被害者による情報開示請求権を定めた法律
- 地域や社会との共存に関する法律
- 環境基本法
- 環境保全についての基本理念と、施策の基本となる事項を定めた法律
- 地球温暖化防止法
- 地球温暖化対策に関して、行政や事業者等の責務を明らかにした法律
- 水質汚濁防止法
- 工場廃水の規制や、排水による健康被害に対する事業者の責任を定めた法律
- ダイオキシン類対策特別措置法
- 廃棄物処理法
- 廃棄物の排出を抑制し、ゴミの分別など適正処理について定めた法律
- 大気汚染防止法
コンプライアンス違反に対する制裁 †
課徴金制度は、違反行為の「やり得」を防止し、不当に得た利益を国庫に納めさせ、違反行為の抑止を測るということにあり、刑事上の罰則である罰金より実効性に優れているといわれる。
参考文献 †
- 『ビジネスコンプライアンス検定 初級 問題集』
- 『ビジネスコンプライアンス検定試験公式テキスト<初級> 第2版』