多くの人で共用して機器を使えば、多少の不便を伴うものの、危機や道具類を効率よく使うことができる。どの程度の不便さ(他人が使っているため自分が使えない状態の程度)をしのべば、どの程度の機器類を準備すればよいか、またはそのとき各機器類の使用率はどの程度になるかといった点を数学的かつ統計学的に説明する理論がトラヒック理論である。
デジタルPBXにおいて、電話をかける場合について考える。
交換機の構造は、入線と出線で構成されていると考えることができます。これを待ち行列の即時式モデルで考えることができる。
まず即時式モデルでは、入線数は無限大と考えることにする。一方、出線の数は有限である。呼の生起は、待時式でいう客の到着にある。T時間中に生起した呼の数がcで表す。これは到着率に相当し、即時式では生起率という。呼の保留時間はサービス時間に当たり、要するに電話を繋いでいる時間(通話時間)のことになる。T時間中に生起した呼の平均保留時間をhとする。
このとき、両者の積chを考える。
ch=T時間のトラフィック量
保留時間はサービス時間の逆数であるから、これは待時式のλ/μ、つまり窓口利用率に当たる。このchを時間数Tで割ったもの(つまり1時間当たりのトラフィック量)を呼量といい、aで表す。つまり、単位時間当たりのトラヒック量を呼量といい、延べ1時間保留されたと同等のとき1[erl](アーラン)と呼ぶ。
よって、次の公式が成立する。
[公式]呼量と呼数と保留時間の関係
(呼量)=(単位時間当たりの呼数)×(平均保留時間)
あるいは
呼量a=トラフィック量/対象時間=ch/T
例:1時間に電話を4回し、各々の保留時間が10秒、100秒、60秒、190秒だったとする。
まず、総保留時間がわかる。
10+100+60+190=360 [秒]
呼量の定義から、呼量を求めることができる。
(呼量)=360/3600=0.1 [erl]
また、平均保留時間を求めることができる。
(平均保留時間)=360/4=90 [秒]
呼量の単位として、延べ100秒間保留される呼量を100秒呼(HCS:Hundred Call Second)と表す。よって、erlとHCSには、次のような関係式が成立する。
[公式]erlとHCSの関係式
1 [erl]=36 [HCS]
また、erlおよびHCSの算出式は次の通りである。
[公式]erlの算出式
呼量[erl]=(呼数)×(平均保留時間[秒])/3600[秒]
[公式]HCSの算出式
呼量[HCS]=(呼数)×(平均保留時間[秒])/100[秒]
一般的にトラヒック理論では、erlが標準的に使われるが、PBXのような呼量の割合が少ない場合にはHCSの方が便利なため多用されている。