目次 †
ファイル編成 †
ファイル編成とは、ファイルを作成する際に定めるファイルの論理構造のことで、データの記録方法などを決定する。
各種編成ファイル †
業務の性質に応じて、ファイルの編成法は使い分けられる。
- 編成法
- 順編成法（SAM：Sequential Access Method）
- 索引順編成法（ISAM：Indexed Sequential Access Method）
- 直接編成法（DAM：Direct Access Method）
- 区分編成法（PAM：Partitioned Access Method）
- 仮想記憶編成法（VSAM：Virtual Stroge Access Method）
それぞれの編成法で使用されるファイルは、○○ファイルとなる。
順編成ファイル（シーケンシャルファイル） †
格納順にレコードを書き込んでいく形式のファイルのこと。編成ファイルの中でもっとも単純なタイプである。主にテープデバイス上において使われる。
データベース、トランザクション、移行前のプログラムのバックアップなど、その後のレコード追加や削除が行われる機械が少なくかつ大容量であるデータの保存に用いられる。
レコードを削除した場合は、物理的に削除するわけではなく（削除して詰めようとしたら、全コピーして再構成しないといけない）、削除マークを付けておくことで論理的に削除される。
順編成ファイルのメリット・デメリットとして次が挙げられる。
- メリット
- 記録領域に空きがでないので、効率よく記録することができる。
- ファイルにアクセスする順番が決まっているため、バッファに空きがある場合は先読みが可能となる。
- デメリット
- シーケンシャルアクセス（順次アクセス）で読み出すので、検索に時間がかかる。
- レコードを変更する場合には、一旦全体を新しいファイルにコピーしながらコピーしながら変更を行う必要がある。
索引編成ファイル（索引順編成ファイル） †
レコードのキー値から作成した索引を持つファイルのこと。順編成ファイルに索引が付いているファイル。レコードを順にアクセスすることもできれば、キーから直接アクセスすることもできる。直接アクセスを行う媒体に対して有効である。例えば、マスターファイルなどは媒体には順次格納すればよいが、特定の項目（キー）で検索する必要がある場合は索引順編成法が有効である。
索引編成ファイルは、次の3つの領域から構成される。
- 基本データ領域（インデックス域）
- レコードが格納されている領域。
- レコードはキー値の昇順に記録されている。
- 索引領域（プライム域）
- レコードを格納した位置（アドレス）と、レコードのキー値が関連付けられて格納されている領域。
- 磁気ディスク装置の場合、マスタ索引・シリンダ索引・トラック索引がある。
- あふれ領域（オーバーフロー域）
- 基本データ領域に入りきれなかったレコードを格納する領域。
この3つの領域は次のように使われる。
- まず基本データ領域にキーの順番が格納され、同時に索引領域に「格納したレコードに対する索引」が生成される。
- レコードの追加が発生した場合は、キーの順番に並んでいるレコードの途中に挿入され、それ以降のレコードは格納位置がずれる。
- ずれた結果、基本データ領域からあふれたレコードはあふれ領域に格納されるが、あふれたレコードが増え、あふれ領域が圧迫されるとアクセス性能が低下するなどの問題が発生する。
- この問題を解決するためには、再編成を行う。
- 再編成はあふれ領域に格納されたレコードを基本データ領域に順に格納し直す作業である。
- 再編成は索引順編成法のユーティリティツールによって行う。
索引編成ファイルのメリット・デメリットとして次が挙げられる。
- メリット
- シーケンシャルアクセス、ランダムアクセス共に可能。
- データ検索はかなり早い。
- データの修正は容易。
- デメリット
- 大量のレコードの挿入・削除によりアクセス効率や記録効率が低下する。
- アクセス効率や記録効率の低下を解消するには、ファイルの再編成（作り直し）が必要になる。
直接編成ファイル（直接アクセスファイル） †
レコードのキー値からレコードを格納するアドレスを求め、記録したファイルのこと。任意の場所にレコードを書き込めるので、読み込み時はランダムアクセスが行われる。頻繁に更新や照会が発生する場合に適用される。
レコードごとに相対アドレスを持つので、キー値とアドレスの対応について次の2通りに大別される。
- 直接アドレス方式
- キー値とアドレスが1体1対応している方式。
- キー値で磁気ディスクのアドレスを直接指定する。
- 間接アドレス方式
- キー値を計算によってアドレスに変換する方法。
- キー値に、特定の演算（ハッシュ関数）をしてアドレスに変換する。
間接レコードのキー値からレコードを格納するアドレスを求める方法も決めておく必要がある。この方法はデータ探索と呼ばれる。
直接編成ファイルのメリット・デメリットとして次が挙げられる。
- メリット
- デメリット
- 空き領域が多くできてしまい、記録効率はよくない。
- 記憶領域の使用効率が悪い。特に直接アドレス方式だと、記憶領域の使用効率がかなり悪い。
- ハッシングを使うため、その分計算時間がかかる〈間接アドレス方式〉。
- シノニムが発生すると、処理の効率が低下する〈間接アドレス方式〉。
区分編成ファイル †
順編成法と索引編成法の両方の特徴を併せ持つファイルのこと。ファイル領域をディレクトリ領域とメンバ領域に分ける。レコードはメンバ領域に格納され、その索引がディレクトリ索引に格納される。
メンバ領域が順編成ファイルであることと、ディレクトリ領域に名前・格納位置・メンバ長・登録日・バージョンなどの様々な情報が格納されるという点で索引編成ファイルと異なる。
区分編成ファイルはバージョン管理が容易なので、プログラムライブラリの格納などに利用される。
メンバは順編成ファイルと同じ編成で、メンバーの名前や格納位置の情報はディレクトリ（登録簿）に登録される。
VSAMファイル †
これまでの編成ファイルはトラックサイズやシリンダサイズなどの媒体の物理的特性に大きく依存していた。これにより、アクセス性能を向上させていたが、同時に移植性を大きく低下させる要因にもなっていた。もしレコードを別の媒体に移行する際には、別媒体の物理特性に合わせてレコードを格納し直さなければならない。
VSAMファイルはIBM社のSystem/370（汎用コンピュータ）で最初に採用された。仮想記憶を実現したときに同時に発表したため、この名で呼ばれるようになった（記憶管理の仮想記憶とは関係がない）。レコード全体をバイトストリームとして扱い、媒体の物理的特性に依存したパラメータ（トラック番号やシリンダ番号など）はすべて相対値として扱う。これにより、媒体の物理的特性から独立した編成が可能になった。
VSAM内部では、順編成・索引順編成・直接編成・区分編成の3種類の編成法が実現された。それぞれを入力順データセット、キー順データセット、相対レコードセットという。
- 入力順データセット（ESDS）
- 入力レコードが、データコンポーネントに順に記録される。
- 工夫すれば、直接アクセスもできる。
- キー順データセット（KSDS）
- 索引用のインデックスコンポーネントと、データ記録用のデータコンポーネントから成る。
- 索引で直接アクセスができる。
- 従来のファイル編成ならば、索引順編成ファイルである。
- 相対レコードデータセット（RRDS）
- データコンポーネントに記録されたレコードを、相対レコード番号で直接アクセスできる。
- 従来のファイル編成ならば、直接編成ファイルである。
シーケンシャルアクセスとランダムアクセスの両方が利用可能である。
VSAMファイルでは、ファイルのことをデータセットと呼ぶ。また、レコードなどを記録する領域をコンポーネントと呼ぶ。
参考文献 †
- 『実践コンピュータシステム』
- 『1週間で分かる基本情報技術者集中ゼミ【午前編】 2006春秋』
- 『超図解mini 基本情報技術者試験 平成19年度版』
