プレゼンテーション(presentaion)とは、送り手側が一定の場所と時間で、特定のメッセージを受け手に伝えて意思決定を促し、目的とする活動を生む情報伝達行為のことである。この定義からすると、プレゼンテーションは、送り手側から受け手側にメッセージを伝えるコミュニケーションの一種といえる。しかし、時間と場所が限られているため、意図したような同意を得るには、入念な準備と創意工夫が必要となる。
提案型社会といわれている現代では、プレゼンテーション能力はますます重要になってきている。『ロジカル・コミュニケーション』によれば、国際社会で求められるスキルのアンケートにより、1位がコミュニケーション力、4位がプレゼンススキル、6位に語学力という結果が出ている。
そのためにも聞き手を納得させるための方法と原理であるコミュニケーション力を、プレゼンテーションの基本として押さえておくべきである。さらに、プレゼンテーションの技術力を身に付けることによって、本当の意味でプレゼンテーションが成功するのである。
プレゼンテーションの狙いは、次の通りである。
ビジネスでは聞き手の立場によりプレゼンテーションが変化する。あらゆる立場が考えられることに注意すると同時に、聞き手の中での重要人物が誰であるかを明確化しておかないと効果は上がらない。
プレゼンテーションは、話し手・聞き手・メッセージの3つから成り立つ。これらのトータルとしての効果が、よいプレゼンテーションを作る。それは次のような3Pの基準で表すことができる。
プレゼンテーションを成功させるのは、聞き手のことをよく理解していることが前提条件である。これを聞き手のモデル化と呼ぶ。聞き手のモデル化は、例えば次のようなタイプ分けによっても可能である。対象者の地位とコミュニケーションタイプから事例を挙げる。
次の3段階のリサーチを行っておけば、プレゼンテーションのポイント(聴き手のこと、聴き手が持っている課題、判断する際に重視するポイントなど)が見えてくるはずである。
どのような状況で行われるプレゼンテーションがより明確にするために、さらに周辺に情報を集める。特に、聴き手の企業・団体が特定のものならば、あらかじめインターネットやデータベースなどで情報を調べておくべきである。
次に、聴き手の情報を集めた後に、プレゼンテーションで求められること・プレゼンテーションの評価の基準・聴き手についての情報・制約条件など、プレゼンテーションを組み立てるのに必要な情報を詳しく把握するには、まず自分にプレゼンテーションを依頼した人に事前取材を行っておき、プレゼンテーションの差異に重要なポイントを探るとよいだろう。
そして、その会社や聴き手について情報を持っている人や、以前プレゼンテーションをしたことがある人から、その聴き手がどのような特性があるか、物事を判断するためのどのような尺度を持っているかなどのアドバイスを受ける。
プレゼンテーションの本番前には、聴き手と話を交わすことができればなおよいだろう。プレゼンテーション前のわずかな時間を利用して、場の雰囲気や聴き手が何を目的に自分のプレゼンテーションを聴きに来てくれたか、聴き手が何を期待しているかを探ってみてもよいだろう。そうすることで、自分が行うべきプレゼンテーションのイメージがより鮮明に見えてきたり、聴き手側の温度をよりリアルに感じることができるだろう。
方向を定めるプロセスの最後の作業は、自分でコントロールできない条件を考えて、できる限り対策をすることである。
例:
次の3つの要素をバランスよく組み合わせた結果、よいプレゼンテーションとなる。
この「論理」「書く」「話す」という3つのノウハウは、プレゼンテーション以外のビジネスの様々な場面で活用できる。
例:
よいプレゼンテーションを組み立てるために必要なスキルは次の6つが挙げられる。
デジタルプレゼンの工程は次のようになる。ステップを省略せずにきちんと考えることで、よりよいプレゼンができるようになるだろう。
プレゼンテーションの原則は次の2点である。
1番目はプレゼンテーションの内容そのものであり、2番目は1番目を効果的に伝える方法である。このように自分が伝えたいことや順番が、相手の聞きたいことや順番に合致していなければ、効果的なプレゼンテーションは行えない。
特に2番目はわかりやすい話し方をすることに直結する。わかりやすい話し方を具体的に実現化するには、話の設計図を描く(アウトライン化と呼ぶ)ということが重要である。アウトライン化の手順は次の3ステップから構成される。
プレゼンテーションの提案骨格をまとめていく方法には大きく分けて2つの方法がある。
機器 | リアリティ性 | 汎用性 | 利便性 | 準備のコスト | 情報の加工性 | 情報性 |
PC | ◎ | ◎ | × | × | ◎ | ◎ |
ビデオ | ◎ | △ | △ | × | × | ◎ |
スライド | ○ | × | ○ | △ | × | ○ |
OHP | △ | ○ | ◎ | △ | ○ | △ |
黒板 or ホワイトボード | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × |
ひとつのプレゼンテーションを発表するにしても、具体的な発表内容を作成する際、時間と知恵を投入して、綿密に組み立てなければならない。プレゼンテーションプログラムの一般的な作成手順は、次の通りである。
プレゼンテーションの質を高め全体の再点検を行うために、リハーサルを行うことが有効である。これらのリハーサルの方法に加えて、組立作業に入る前に設定したプレゼンテーションの想定としているゴールやプランニングビジョンなどに立ち戻り、ここまで進めてきたプレゼンテーションの準備が当初の目的にかなうものに仕上がっているかを、もう一度チェックする。
リハーサルには、他の人の協力をもらう方法とセルフチェックの方法がある。
どんなにプレゼンテーションの経験があっても、プレゼンテーション直前と言うのは緊張するものである。心臓の動悸が高まったり、喉や口が渇いたり、頭の思考回路がうまく動かなかったりなどのような、様々な形で現れる。
こうした緊張に対する対処方法として、次が考えられる。
起承転結の構成だと前置きが長くなる傾向がある。これではマイナス効果になってしまう。そこで、最初に結論を発表し、その上で具体的な展開に入るように工夫を凝らすとよい。
聞き手からすれば、まず結論はどうだったのかということを知りたいわけである。もし結果が出ているとすれば、それを先に述べる方がよい。そうすることで、そこに至った理由は何かということを聞き手側も意識化しやすいからである。
「連鎖的に話が展開され、何を言いたいのかわからない」という問題点がある。これは日本人の会話にありがちである。これを解消するには、話の構造を予告できれば、話し手の話全体に対するコントロール性を数段高めることができる。ランドマーク(目印)が付いている地図を辿っていくようなものだからである。聞き手もそのランドマークを共有できるのだから、無理なく、かつ正確に話を理解していくことができる。
ただ、話の全体を予告することは、話し手にとって窮屈なことである。後で自由気ままに論点や主張を変えられなくなるからである。しかし、どんなに淀みない話し方をしても、またどれだけ価値のある情報であっても、聞き手に伝わらなければまったく意味がないのだ。
メタファーとは、比ゆ的なイメージを与える言葉やモノのことである。話し手はメタファーにより受け手にインパクトのある類推思考を促すことができる。メタファーによって圧縮された内容のイメージは、気の利いたキャッチフレーズやネーミングがたくさんある。
ホワイトボードは、プレゼンテーションの場では基本的に補足的に利用するのが一般的である。ホワイトボードに書いている間に関心が薄れたり、時間がかかることなどにより、ホワイトボードに多くの記述をしているわけにはいかない。
しかし、ライブ感覚で生の意見をその場で要約したり、聞き手に印象付けて理解させるための図解を作ったりするときには効果的である。
[補講]数学の講義の場合は、ホワイトボードに書くことは有効である。人間は書くスピードでしか理解できないといわれており、特に数学ではなおさらである。
ユーザーとの参画意識を作るためには、次の3つを意識する必要がある。
例えば、「何か質問はありませんか?」や「〜についてどう思いますか?」などという問い掛けは悪い例である。よくプレゼンテーションの最後に儀式的によく聞かれる発話であるが、これだけでは甘いといえる。なぜなら、問われている内容について、すでに聞き手に何らかの予備知識がある場合を別にすれば、「どう思いますか?」といった漠然な問いかけには、どう応えてよいかわからない方が普通である。「どう思うか」よりも「どのようになるか」の方が具体的で効果的である。よい例としては、「AとBのこの点を比べるとすれば、どのようなメリットがありますか?」「仮にAだとすれば、Bになるでしょうか?」などである。
基準線とは基準になる線のことである。基準線が明確になっていると、すっきりまとまった感じになり、見やすくなる。
カラーリングの目的は、色彩を使って情報をわかりやすく使えることと全体のイメージをコントロールすることである。
暖色は動的で明るい印象を与え、寒色は落ち着いた印象を与える。
主にプレゼンテーション用資料に適用する場合の背景の色と文字・図形の色の組み合わせは次の通りである。上が動的、下が静的を意味する。
その他のテクニックとして次が挙げられる。
DTPR(Desk Top PResentation)ソフトとは、プレゼンテーションのためのソフトウェアである。ビジュアル資料の作成やりあるタイムプレゼンテーションなどに活用される。
主な機能には次のようなものがある。