目次 †
マルチバイブレータ †
デジタル回路では、その心臓部に必ずパルスの発生器やパルスを数えたり記憶したりする部分、さらにはパルスの形を変えたりする部分が使われている。その基本となるのがマルチバイブレータといえる。
今では専用のICやLSIでマルチバイブレータを実現できるが、原理の基となっているのはトランジスタを使ったパルス回路である。
- 右のトランジスタがONのときには、そのトランジスタのコレクタ-エミッタ間で大きな電流が流れる。コレクタ-エミッタ間の抵抗は事実上0で、コレクタ電圧はほぼ0Vになる。
- コレクタ電流が流れると、コレクタ電圧が0Vになるのがポイントである。
- このトランジスタのコレクタは、左のトランジスタのベースに繋がっているため、片方のトランジスタがONのときには、もう片方のトランジスタは必ずOFFになる。
- どちらのトランジスタが先にONになるかどうかは、ベース電圧が先に上がった方で決まる。
- さらに、コンデンサの充放電を利用することで、強制的にトランジスタのベース電圧を上げて、この2つのトランジスタのON/OFFの関係を判定することができる。
マルチバイブレータの種類 †
マルチバイブレータには次に示す3つの形式があるが、普通にマルチバイブレータというときはこの中のアステーブルマルチバイブレータを指す。これら3つのマルチバイブレータはそれぞれかなり違った作用をします。
アステーブルマルチバイブレータ †
- 無安定
- 電源を入れると、連続してパルスを発生し続ける。
- その周波数はRBとCの値によって決まる。
- パルスの速度はかなりの幅で自由に発生させることができる。
モノステーブルマルチバイブレータ(ワンショットマルチバイブレータ) †
- 単安定
- 動作が止まる状態が「安定」であり、反対に(電源をOFFにするまで)動作が止まらない状態が「無安定」である。
- 入力パルスがあると、その波形に無関係に一定波形を出力する。
- 例えば、人が手でスイッチを押す場合、スイッチを押した瞬間にパルスを発生したとしても、手を離すまでの時間は必ずしも一定していないので、不揃いのパルスが出る。
- このような作用はデジタル回路では大変重要である。
バイステーブルマルチバイブレータ(フリップフロップ) †
- 双安定
- 入力2発に対して出力1発が出る。
- 出力パルスの数が入力パルスの半分になるので、これを何段か重ねると、入力パルスの数を数えることができる。
- 例えば、4段重ねると、出力パルスの1/24、即ち入力パルス16個で出力パルス1個が出る。言い換えると、出力パルスが1個でれば、それは入力パルスを16個数えたことになる。
- 数を数えるというのは、デジタル回路の最も基本的な動作のひとつである。
マルチバイブレータの実現 †
トランジスタ利用による無安定マルチバイブレータ †
電子ブロックminiによる無安定マルチバイブレータ回路 †
ブロック配置図
回路図
1:マインスイッチをONにすると、左右どちらかのトランジスタがONになる。
ここでは左のトランジスタが先にONになったとすると、右のトランジスタはOFFである。
LEDにも電流は流れるが、左のトランジスタのベース電流が小さいため付かない。
このとき、10μFのコンデンサは充電を始まる。充電が終わると、ベース電圧が下がり、左のトランジスタはOFFになる。
状態1
2:左のトランジスタがOFFになると、右のトランジスタがONになる。
右のトランジスタのコレクタ電流が流れ、LEDが付く。
このとき、先ほど充電された10μFは放電する。さらに、4.7KΩと10KΩの抵抗を介して、10μFのコンデンサに逆向きの充電が始まる。また、左の47μFのコンデンサにも充電される。
47μFのコンデンサの充電されるにつれて、右のコンデンサのベース電圧が下がり続け、右側のトランジスタがOFFになり、LEDが暗くなる。
状態2
3:右側のトランジスタがOFFになると、10μFのコンデンサから左側のトランジスタにベース電流が流れ、左側のトランジスタがONになる。
10μFのコンデンサの放電が終わると、逆向きの充電が始まる。この充電が終わると、左側のトランジスタがOFFになり、ステップ2の状態になる。
状態3
トランジスタ利用による単安定マルチバイブレータ †
電子ブロックminiによる単安定マルチバイブレータ回路(1) †
ブロック配置図
- リード線の端子を一瞬接触させると、LEDが1回付いてやがて消える。
- リード線を接触させたままでいると、次のリスタートが難しくなる。
- その場合は、黒色のリード線の端子を本体の−端子に接触させて、10μFのコンデンサに溜った電機を放電させる。
回路図
- 2個のトランジスタの一方のコレクタが、他方のトランジスタのベースに繋がっている。
- この繋ぎ方は、一方のトランジスタがONになると、必ずもう一方のトランジスタはOFFになるという機能を持つ。
- 複数のトランジスタのON/OFFによって電気的な振動を生み出す。
- 単安定マルチバイブレータでは1回だけ振動して止まる。
電子ブロックminiによる単安定マルチバイブレータ回路(2) †
- リード線の端子を一瞬接触させてすぐに離すとLEDが付く。そのまま3〜5秒間LEDが点灯し続け、やがて消える。
ブロック配置図
回路図
1:メインスイッチをONにすると、LEDの抵抗は小さいので、47μFのコンデンサの充電のために電流が流れる。
すると、左のトランジスタのベース電圧が右のトランジスタより早く上がり、左のトランジスタがONになる。LEDを流れる電流は弱く、うぐにコンデンサが充電完了してしまうので、LEDは付かない。このまま安定する。
2:次に、リード線の端子を接触させると、10μFのコンデンサを通して、充電のための電流が流れ、右のトランジスタのベース電圧が上がってONとなり、コレクタ電流が流れてLEDが付く。
このとき、右のトランジスタにコレクタ電流が流れるから、コレクタの電圧はほぼ0Vとなり、左のトランジスタはOFFとなる。
また、47μFのコンデンサは80Kの抵抗を通して充電を始める。これがタイマーになる。
3:先ほどの47μFの充電が終わると、左のトランジスタのベースは、右のトランジスタのコレクタと繋がっていない状態になる。
すると、左のトランジスタのベース電圧が上がり、ONになる。左のトランジスタのコレクタ電圧がほぼ0Vになり、右のトランジスタのベース電圧もほぼ0Vとなるため、LEDは消える。
専用IC555利用によるマルチバイブレータ †
電子ブロックminiによる無安定マルチバイブレータ †
電子ブロックminiによる電子ボタル †
- メインスイッチをONにすると、緑色のLEDが時間をおいて点滅する。
- 無安定マルチバイブレータ回路を使って、蛍の光を再現している。
ブロック配置図
- 左右のトランジスタのON/OFFで点滅の繰り返しを作り、それぞれのトランジスタのベースに繋がった電解コンデンサによってそのタイミングを調整している。
回路図
- 1MΩと10μFでLEDが付く時間を決めている。
- また、80KΩと4.7KΩと47μFでLEDが消える時間を決めている。
- この回路の場合は、1周期が約7秒である。
- 47μFに直列の4.7KΩの抵抗を大きくすると、LEDが消える時間が短くなる。
- 左のトランジスタのコレクタ抵抗(1KΩ)は負荷抵抗である。
電子ブロックminiによる双安定マルチバイブレーター回路 †
ブロック配置図
- リード線の端子をケースのAの接点に接触させて、すぐに離すとLEDが付いたまま消えない。次に、リード線の端子をケースのBの接点に接触させて、すぐに離すとLEDが暗くなる。
- このように、双安定マルチバイブレータ回路はリード線の端子を接触させた状態を記憶することができる。
- リード線の端子を接触させる場所で、コンデンサの充電の向きが変わることがポイントである。
回路図
1:まずは安定状態になる。
状態1
最初に左のトランジスタのベース電圧が上がり、ONになったとする。するとコレクタ電圧が下がり、右のトランジスタはOFFになるのでLEDは暗い状態である。
左のトランジスタはベース電圧が高いので、ONのままで回路は安定状態になる。
2:リード線をA(−の接点)に接触すると、47μFのコンデンサが充電を開始する。
状態2
左のトランジスタのベースが一時的に0Vになり、左のトランジスタはOFFになる。一方、右のトランジスタがONになり、LEDは明るくつく。
右のトランジスタがONの場合は、左のトランジスタはベース電圧が下がってOFFのままであるから、外部から何らかの働きかけがない限り、LEDが付いたままの状態を維持する。
3:リード線をB(+の接点)に接触すると、47μFのコンデンサは左のトランジスタのベースに放電を始めて、同時にステップ2とは逆向きに充電を開始する。
状態3
これで、左のトランジスタのベース電流が流れるのでONになる。右のトランジスタはOFFになり、LEDが暗くなる。
電子ブロックminiによるLED2個の双安定マルチ回路 †
ブロック配置図
- リード線の端子をAに接触させると、赤のLEDが明るく、緑のLEDが暗くなる。
- リード線の端子をBに接触させると、緑のLEDが明るく、赤のLEDが暗くなる。
回路図
- 2つのトランジスタの負荷が、赤と緑のLEDになる。
- リード線の端子をAに接触させると、左のトランジスタがOFFになり、赤のLEDが付く。
- リード線の端子をBに接触させると、右のトランジスタがOFFになり、緑のLEDが付く。
参考文献 †