モールス信号はコード化されたものの代表的例である。Aはトン・ツー、Bはツー・トン・トン・トンといったようにトンとツーだけの組み合わせでアルファベットや数字記号を対応させていう。このように対応させることをコード化という。
モールス信号は単にコード化されているわけではなく、さらに工夫されている。最もよく使うアルファベットはEであるが、これをモールス信号ではトンで表す。また、あまり使われないZがモールス信号ではツー・ツー・トン・トンと長い。要するに効率化も考えられてモールス信号は作られているわけだ。
ちなみに日本語のモールス信号はこのような合理性はまったくない。
モールス電信は電気を流すのに電線が必要なので、有線通信の元祖ともいえる。また、モールス符号はデータ通信をはじめ情報通信にも不可欠な情報の符号化の原点といえる。
[補講]電磁石はおろか乾電池もなかった17世紀に、磁石を応用した遠隔通信のアイデアを思いついた人物がいる。それはカトリック教会のイエズス会士で、万能学者とも魔術師とも呼ばれたドイツのキルヒャーである。彼は磁石同士が吸着したり反発したりする現象を利用すれば、遠隔地を結ぶ一種の無線通信が可能であると考えたのである。そもそもキルヒャーは磁石の作用はテレパシーのように伝わると考えたらしい。 ◇
アマチュア無線の試験は、各ランク(級)ごとに次のモールス聞き取り問題が提出される。
よって、CWを楽しむには第4級ではダメで、第3級以上を持っている必要がある。
Morseが電信(モールス信号)を発明した時の重要な点は26個もある欧文アルファベットを電流の時間的パターン(波形)として符号化したことにある。Morseの作った符号は電流がオンになる状態の継続時間が短/中/長である3種類の素信号(パルス)を組み合わせたものであったが、現在使われているモールス信号は短点(dot)と長点(dash)の2種類を組み合わせたものである。これらを最大5個並べたものが1個のアルファベットや文字(句読点など)を表し、文字と文字の間には少し長い空隙をいれて、文字を識別する。
短い符号(短点)と長い符号(長点)を組み合わせて、アルファベットなどの文字に対応させたモールス符号を送信機のキーをON/OFFにして、電流として電線に流す。受信者は電流の変化によって受信機の鉄片が吸引されて立てる音を聞き分けることによって、文字を受信できる。
よって、モールス信号は文字を時間的パターンに対応させる方法の一つであり、可変長符号と呼ばれるもののひとつである。
戦争前、日本の電子技術は、量産体制や品質管理システムを確立するほどには進んでいなかったが、質的にはさほど遅れていたわけではない。西洋諸国に遅れることなく、1925年にラジオ放送を開始したし、真珠湾上空の無線電信機から打電された「トラトラトラ」(モールス)が6,000km離れた日本の複数の受信所で見事に受信されるなど、個々の技術では何とか先進国と肩を並べる業績も挙げていた。
戦車の場合、アンテナを立てると敵に見つかってしまうので、無線電話を搭載せずに砲弾の下で車長が身体を乗り出し手旗信号によって意思疎通を行ってきたが、ノモンハン事件で鉄の嵐を経験し、また砲塔の周りにアンテナを張り巡らしたソ連戦車を見て、急遽無線電話を搭載することになった。最初は不具合だらけだったが、運用者の厳しい要求で逐次改善され、南方作戦の頃には手旗による指揮は見られなくなった。
短点 | 1(短点を1とした場合の長さ) |
長点 | 3 |
短点や長点の間隔 | 1 |
字と字の間隔 | 3 |
語と語の間隔 | 7 |
モールス信号は角形波(square wave)を幾つも重ねたような波形である。これはフーリエ解析の理論によって、多数の周波数の正弦波交流の重ねあわせと同じだということが可能である。切れの良い角形波は極めて高い周波数の成分を含んでいて、それをそのまま伝送するには極めて広い通過帯域幅を持つ通信線が必要となる。もし、帯域幅が狭い通信線を利用してしまうと、角が取れて鈍った波形になってしまい、受信側がdotとdashを区別できなくなり、通信が混乱してしまう可能性がある。
ちなみに、帯域幅Wと伝送速度(送り得るdotの最小幅τの逆数)は次の関係式を成立させる。
←(*)
(c≒1)
搬送信号の場合は搬送波の周波数をf0とすると、変調された信号波はf0だけではなくて、その両側のある範囲に和たる周波数成分を含んでいる。そして、信号を許容できる程度以上に鈍らせないために必要な帯域幅を2W(即ち、f0-Wからf0+Wまで、片側の幅がW)とするならば、そのときの送り得るdotの長さτとの関係式(*)と同じになる。よって、搬送信号を鈍らせずに送るためには、通信線は(*)で与えられるWの2倍を通さなければならないということになる。
しかも、この2Wの帯域幅は、その通信専用としなければならない。もし、隣の(f0が隣接する)搬送信号の占める帯域と重なってしまうと、漏話(crosstalk)が発生してしまう。よって、隣の通信内容が自分の通信内容に歪んだ形で混じってきて、通信内容が失われてしまうことになる。
モールス符号は、「ト」と「ツー」という2種類の長さを持つ音の組み合わせでできている。「ト」の長さを1とすると、「ツー」の長さは3である。ひとつの符号内の無音部分の長さは1で、符号と符号の間の無音状態の長さは3である。また、語句間の無音状態の長さは7である。
これを次に示す。ただし、ここでは符号内の無音状態を「_」(全角にしたのは隣接する文字との小さな区切りが見えるようにするため)と表して見やすいようにする。
E:─
T:───
A:─_───
ET:─___───
AET:─_───___─___───
この符号のリズムをつかみとることが大切である。
まず、欧文モールスから始めてみよう。欧文モールスはその種類も和文モールスに比べて少なく、符号の長さも短くて、覚えやすいからである。
まずはABCDEの文字に対するモールス符号を覚える。 そして、A〜Eのモールス符号ひとつひとつを頭の中に入れたら、次に実際の練習である。
ここでは、モールスマスターというモールス信号練習ソフト(Windows用)を利用してみます。メニュー>「練習」>「欧文・ABCDE・25文字/分」を選んで、スタートする。1分間に25文字の割合でA〜#までのモールス符号がランダムに聞こえてくるので、それを紙に書き取る。A〜Eが、完璧に聞き取れるようになったら、F〜Jを混ぜて練習する。という具合に、次々と新しい文字を混ぜて練習すると、前に覚えたモールス符号を忘れることなくモールス符号をどんどん覚えらる。。
そして、欧文が聞き取れるようになったら、数字を混ぜたり、速度を上げて練習する。
練習速度が25文字/分ぐらいだと、モールス符号が聞こえてから紙に文字を書くまでに時間があるから、「1文字聞いて1文字書く」という動作になる。
しかし、練習速度が上がるにつれて、そうはいかなくなる。1文字聞いて、それを書こうとすると、もう次の文字が聞こえてくるのである。速度に追従するためには、頭の中にFIFO(First-In First-Out)という先入れ先出し用の入れ物が必要になってくる。つまり、耳で音を聞いて、紙に書きながら、次の音を読むのである。このことは、練習速度を上げるに従って、自然と身につくだろう。
身の回りには、ありとあらゆるものに、文字が使われている。例えば、店に買物に行くまでに目に付くすべての文字をモールス符号にしてみるのだ。店の看板や車のナンバーなどなど。これは、英語などの外国語の学習方法にも使えるだろう。