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目次

ロボトミー

  • ロボトミーが対象にするのは衰弱性の緊張や不安であった。
    • そのため、フリーマンは知的障害や精神遅滞はロボトミーで治療できるものではないと考えていた。
  • 1949年にパリで開かれた第4回国際神経学会では、経眼窩ロボトミーの公開手術を深前頭切断で行った。
    • このときフリーマンは、精神疾患患者の脳の治療を、この頃製造が始まった初期の計算機の修理技術になぜらえて話をした。
      • 「(聞いたところでは)電気ショックを与えるのとちょうど同じように回路を過負荷にして、マシンが誤作動している間に、真空管を一列取り出す。これが白質截切にあたる」と語った。
  • フリーマンはロボトミー患者の自殺率を調査している。
    • 患者の記録を見る限り、手術以外の原因で死亡した849人のうち、自殺者はわずか22人であった。自殺者の大半は、ワッツと行った前部前頭葉ロボトミーを早い時期に受けた患者だった。全体として、ロボトミー患者の自殺率は、精神病院の入院患者の自殺率の半分であった。
      • ただし、病院では自殺をしようと思っても手段がないことが多い。
  • 「精神外科」や「ロボトミー」という用語は、アイスピックなどの悪いイメージを思い起こさせるため、現代の医師たちは使わない。
    • 代わりに「機能神経外科」「精神医学的外科」「精神疾患のための神経外科」といった表現が使われる。
  • 頭蓋に穴を穿【うが】つ初期のロボトミーの頃から、フリーマンは患者が術後すぐ、それまで悩まされてきた問題に関心を失うという報告を行っている。問題が解決したわけではないのに、患者自身が気にしなくなるのである。
    • 初期の患者の1人は、手術の先日、髪を一部剃らなければならないと言われてヒステリーを起こした。そのため、この女性患者は拘束され鎮静剤を投与された。術後の数日後、頭の禿げた部分を見て笑い、この程度のことを気にした自分は愚かだといったという。

ロボトミーという言葉が生まれるまで

  • 1935年、ロンドンを訪れたフリーマンは、チンパンジーの前頭葉切截【せっせつ】手術に関する報告を聞いた。--理由は断定されていなかったものの、術後のチンパンジーは一頭残らず、すっかりおとなしくなったという。
  • この報告を聞いた医師たちの中に、ポルトガル出身の神経科医エガス・モニスがいた。
    • モニスは帰国後の1935年末、人体での前頭葉切截手術を試み、こうした手術を精神外科と呼んだ。ロイコトーム(前頭葉白質切截メス)と呼ばれる器具を使って前頭葉を切截する術法に、ロイコトミーと名付けた。
    • モニスはロイコトミーこそが精神病を根絶できる治療法だと考えた。
      • ロイコトミーに関する論文を発表し、重度の不安症や鬱症状に苦しむ患者に最適な治療法であり、統合失調症では全く効果が得られないと報告した。
  • モリスの実験をフランスの医学誌で読んだフリーマンは、探し求めた答えが見つかったと考えた。
    • モニスの依頼でロイコトームを製作している会社に連絡し、自分もいくつか購入した。ロイコトームが届くと、フリーマンは研究仲間のジェイムズ・ワッツと共に、ジョージ・ワシントン大付属病院の遺体安置所で脳手術の実験にとりかかった。メスを当てたときの脳の感触はやわらかいバターのようで、ワッツは脳が意外に硬いことに驚いたという。
  • 1回目か2回目の手術の後、フリーマンは術法の名をロイコトミーからロボトミーに変えることを提案した。

フリーマン

  • フロイトを高く評価し、その治療とフロイト自身の人物像に魅力を感じていた。
    • フロイトも自分と同じように精力的にハイキングをして歩き疲れることがなかったという話を繰り返ししていたという。
    • ロボトミーのメカニズムを説明する際に、イドや超自我といったフロイトの概念を援用しようとすることもあったほどである。
  • エゴイスティックで、1人で仕事をすることを好んだという。
  • フリーマンはフロイトの理論や精神療法には興味を示さず、むしろ危険なやり方だと考えていた。
    • 「人は自分自身がいかに唾棄【だき】*1すべき人間であるかを悟ってしまうと、ほんの少し落ち込んだだけでも死んだ方がましだと考えるようになる」と考えていた。
  • ロボトミー以前は、医師としては大きな功績を残せなかったが、教師としては大いに人気を博した。
    • 講義は見世物のような活気に包まれ、多くの学生を集めた。とりわけ黒板に両手で同時に板書するのがうけたという。

参考文献

  • 『ロボトミスト』
  • 『ぼくの脳を返して』


*1 唾を吐き捨てるように、捨てて顧みないこと。忌み嫌い、軽蔑すること。