契約に関する問題を解決するために、共通した最低限度の契約上のルールを決めて、さらにいくつかの具体的な契約形態と個々の内容についてあらかじめき規定している法律が、民法である。
民法は、全部で1,044条から成る。それらは次の4つの部分から構成される。
契約とは、2人以上の当事者の意思表示の合致によって成立する法律行為のことである。例えば、売買契約や請負契約などがある。
ここでいう当事者とは、個人である自然人の他に、企業などの法人も含まれる。その当事者が、「買います」「売ります」といった「意思表示の合致のみ」（一部の契約でも目的物の受渡しも必要）によって契約が成立する。
当事者は、幻想として「誰と契約するか」「どのような契約内容にするか」「契約をするか否か」という点について自由に決定することができる。このことを契約自由の原則（私的自治の原則）という。
この契約自由の原則は、自由経済の基礎となる重要な原則である。消費者にとっては、様々な相手と望ましい条件で契約を結べることを保証する。一方、企業にとっては、様々な商品・サービスを提供できることを保証する。
自由といっても何でも自由ではなく、最低限のルールには従わなければならない。このルールが民法に記載されているわけである。
民法では目的ごとに13種類の典型契約を規定している。ただし、これ以外の契約形態を認めないというわけではない。契約の有効要件を満たす限り、契約自由の原則によって、検定契約中の契約を組み合わせて用いたり、当事者において独自の契約内容を定めることもできる。
次に、その13種類の典型契約を列挙する。
物権とは、物を直接に支配できる排他的な権利のことである。例えば、不動産や動産における所有権が代表格である。他にも、民法において規定された物権がある物件法廷主義（民法175条）。
物権の取得方法は次の通りである。売買契約あるいは設定契約による取得が主である。
不動産を目的とする物権の設定および移転は、売買契約や設定契約により、当事者の意思表示のみで意思表示を生じる。しかし、そのことを当事者以外の第三者に対抗するには、不動産登記法に定める手続きに従い、登記所（法務局）のおいて登記しなければならない（民法177条）。これを対抗要件という。ただし、入会権と留置権を除く。
よって、たとえ先に土地の引渡しを受けたとしても、登記を受けていなければ、土地所有権を対抗することができないわけだ。
そして、動産に関する第三者対抗要件は、その引渡しとされている（民法178条）。
業務委任契約とは、会社が一定範囲の業務について、包括的に業務を委託する契約形態のことである。他の会社に委託する場合の他、外部の個人との間で雇用契約ではなく、委託契約を結ぶケースもある。
一定範囲の業務なので、何か仕事の成果物・完成を伴なう場合には請負契約的な要素を含む。また、その範囲で契約締結権や代理権といった法律・事実行為を依頼する場合には、委任契約的な要素も含む。
よって、業務委任契約では、請負契約や委任契約の規定に依拠しつつも、次の点について明確に定める必要がある。
リース契約とは、利用者と販売会社とが製品について検討し、その製品を利用者から依頼を受けたリース会社が購入し、これを一定期間利用者に賃貸する契約形態である。
民法の売買契約的や賃貸借契約的な要素を含むが、利用者の契約先はあくまでリース会社である。通常は製品について販売会社が利用者に直接責任を負うことはなく、利用者がリース契約を途中解約することもできない。途中解約しようとすると、通常は買い取りになる。
よって、販売会社の説明や製品に対する責任をリース会社に主張することはできないから、契約に際してはリース料や契約期間はもちろん保守・点検やその料金負担を含めて、リース契約内容を明確に定める必要がある。
秘密保持契約（Non Disclosure Agreement：NDA）とは、新規プロジェクト準備時や新商品開発時などの正式な契約を行う前段階の交渉過程または契約成立後において、当事者が知り得た相手方の業務上の秘密を外部に漏らさない旨の契約のことである。
業務委託契約など正式な契約を締結する際には、契約条項として秘密保持条項を加えることがほとんどである。正式契約の前段階の交渉過程においても、一般には重要な企業情報が相手側に伝わることになるので、正式契約に先駆けてまずは秘密保持契約を結ぶことが大切といえる。
秘密保持契約や秘密保持条項においては、その対象事項や対象者の範囲、秘密保持期間（例えば「契約終了後も秘密を存続する」）、万一漏洩した場合の責任について、明確にしておく必要がある。
