*目次 [#v2f2f72c] #contents *コイル [#jac84a70] コイルとは電線を巻いた部品であり、主にインダクタンスを持つことを利用するために用いる。 *コイルの特徴 [#ae07e7fa] -[[リレー]]・[[ラジオ]]・[[スピーカー]]・[[モーター]]などの多くの場面で使われる。 -コイルに電流を流すとコイルの周囲に磁界が発生する。 --この磁界を強くする方法として次が考えられる。 +++コイルの巻き数を多くする。 +++コイルに流れる電流を大きくする。 +++コイルの中に軟鉄心を入れる。 *コイルの仕組み [#i1d3c487] **電磁誘導 [#i42c4e52] コイルは電線を巻いたものであり、電流を流したり・切ったりすると電圧が起きる。また、磁力線が多く出る(通る)ものに高い電圧が起きる。なので、電流の変化の様子が同じ場合、巻き数が多く、コイルの中に鉄心が入っていると、高い電圧が起きる。 (巻き数が小)<(巻き数が大)<(さらに鉄心を入れる) この様子を''電磁誘導''という。 **コイルと直流/交流の関係 [#i1400faf] 交流はコイルの中へ流れていくときに障害を受けて、直流の場合と比べて[[豆電球]]の明かりは小さくる。なぜならば、直流の場合はコイルに発生する磁力線はいつも同じ強さで同じ形を保っているので、コイルの中へ流れる電流は障害を受けないでスイスイと流れるからである。 一方、交流の場合は電流の流れる量や方向によって、磁力線が強くなったり、向きが変わったりする。この磁力線の変化がコイルに交流が流れるとき障害となる。 [補講][[コンデンサ]]の場合は、直流では電気が流れず(一瞬だけは流れる)、交流では電気を通す。 ◇ **誘導性リアクタンス [#pebcac0d] コイルに直流電流を流すと、磁力線が生じるが、この磁力線によってコイルには一瞬、加えた電圧を打ち消すような逆電圧が生じる。これを逆起電圧といい、この現象を''自己誘導作用''という。そして、どのくらい大きな逆起電力が生じるかを表すのが''インダクタンス(inductance)''という。記号はL、単位としてH(ヘンリー)を用いる。 インダクタンスは、コイルに直流電源を繋いだ回路で現れましたが、交流電源ではどうなるだろうか。実は、交流は正弦波交流のことなので、直流のときのインダクタンスがコイルの中で繰り返し発生する。つまり、コイルが交流に対して抵抗を示しているわけだ(直流は流しつづける)。この抵抗のことを''誘導性リアクタンス''という。その記号をXSUB{L};、単位はΩを用いる。その誘導性リアクタンスXSUB{L};は次のように表される。 &mimetex("X_L=\omega L =2 \pi f L"); ただし、fは周波数である。 この場合、Lがコイルのインダクタンスで、XSUB{L};は周波数fに比例することがわかる。同時に、コイルの自己誘導作用が大きいほど、その誘導性リアクタンスXSUB{L};も大きくなるということになる。 例1:インダクタンス1mHのコイルを1MHzの周波数で使用すると、リアクタンスXSUB{L};はおよそいくらになるか。 &mimetex("X_L");~ &mimetex("=2 \pi f L");~ &mimetex("=2 \times 3.14 \times (1\times 106) \times (1 \times 10^{-3})");~ &mimetex("\approx 6.3 \times 10^3");~ &mimetex("=6.3");[kΩ] ◇ 例2:下図に示す回路に流れる電流iは、いくらか? #img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image4/yuudouseiriakutansu_mondai1.JPG) #img(,clear) 誘導性リアクタンスの公式とオームの法則で求めることがわかる。 まず、誘導性リアクタンスを求める。 &mimetex("X_L=2 \pi f L=2 \times 3.14 \times 50 \times 10=3140");[Ω] そして、オームの法則から電流iを求める。 &mimetex("i=\frac{e}{X_L}=\frac{100}{3140} \approx 0.03=30 \times 10^{-3}[A]=30[mA]"); ◇ ***インダクタンスの特徴 [#sd9d0a04] -インダクタに交流電流を流すと、電圧より電流の位相が遅れて、周波数が高いほど電流を流しにくくする働きを持つ。 -インダクタに直流電流を流すと、電圧のON/OFFの瞬間、即ち電流が変化しようとする瞬間以外は何も作用を示しない。 **容量性リアクタンス [#o20afaf6] コンデンサに直流を加えると、コンデンサに電気がたまってしまい、電流が流れない。ところが、コンデンサに交流を流すと、交流電源の電圧、周波数、コンデンサの静電容量で決める電流が流れる。これはコンデンサが交流に対して、一種の抵抗を示しているわけである。この抵抗を''容量性リアクタンス''という。 コイルの容量性リアクタンスXSUB{C};とすると、次のような公式になる。 &mimetex("X_C= \frac{1}{2 \pi f C}");[Ω] この公式から、コイルの容量性リアクタンスは、周波数に反比例して小さくなることがわかる。 *コイルの種類 [#nf19c54c] **共振回路用インダクタ [#o30e7afc] ・コイルとコンデンサを並列または直列に接続すると、その容量とインダクタンスの組み合わせで定まるある周波数に対して共振し、その周波数の電流だけを取り出したり、または除外することができる。 ・TVのチューナー、ラジオの同調回路で使われる。 **スイッチング電源用インダクタ [#s8028044] ・スイッチング電源は小型で効率のよい電源装置として広く使われている。その心臓部がトロイダルコアを使ったインダクタである。 ・このインダクタは、電流が流れているとき、内部に電磁エネルギーを蓄積するので、その性質を利用する。 ・スイッチング電源で使われる。 **可変インダクタンス [#g9ac212f] ・インダクタンスを変更できるコイルのこと。 **コモンモード・チョークコイル(チョークコイル) [#rfbf4df2] ・大きさまたは方向が変化する電流、即ち交流をコイルに流すと、そのコイルには電圧が起きる。その方向は流そうとする電圧と反対なので、流れ込もうとする電流を防ぐ。これはコイルに抵抗力がある現象ともいえる。 よって、交流を流さないようにするには、普通の抵抗器でも可能だが、コイルを使った方が効率的である。そのためのコイルをチョークコイルという。 ・また、同じインダクタンスなら低周波より高周波に対して、周波数に比例した大きさで抵抗を示す。 ・電源装置のフィルタ回路(整流出力に含まれる交流成分の除去)で使われる。 ・商用電源にのってくる雑音電圧の除去(ノイズフィルタ)で使われる。 ・特に、高い周波数帯で使用するタイプのものを、高周波チョークコイルと呼ぶ。 **エアダックスコイル [#m1c320d9] ・無線機の[[送信機]]・[[受信機]]・クリコン・[[測定器]]などを自作するときに欠かせないもの。 ・メッキ線を空心に巻いたもので、直径6cm〜1.5cm、線径2mm〜0.5mm、ピッチ4.2mm〜0.9mmまで、それぞれの用途別に各種用意されています。 ・送信機のタンクコイル、クリコン、測定器などの同調、発振コイルなどに、Qの高いFBなコイルがすぐ作れます。 ・もちろん、アンテナカップラー、ローディングコイルなどにも使えます。 *コイルの故障 [#naa7501f] ・故障があるとすれば巻線の断線ということになるが、普通はまず起こらない。ただし、高周波チョークは線が細いものが多いので、切れることもある。 *コンデンサとコイルの現象 [#p38bdf8f] 電圧と電流の関係を、3大素子(比例・積分・微分)について整理すると、次のようになる。 #img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/coil.gif) #img(,clear) -抵抗(R) --抵抗では、オームの法則によって電圧は電流に比例する。 -積分(C) --コンデンサでは、電圧は電流の積分に比例する。比例係数の逆数をCで表し、静電容量と呼ぶ。単位はファラッド(F)とする。ただし、Fは大きすぎるので、μFを用いることが多い。μ(マイクロ)は、100万分の1(=10SUP{-6};)である。 -微分(L) --コイルの両端の電圧は、流れる電流の微分に比例する。比例係数を記号Lで表し、インダクタンスと呼ぶ。単位はヘンリー(H)とする。ただし、Hは大きすぎるので、mHを使うことが多い。m(ミリ)は1000分の1(=10SUP{-3};)である。 これら抵抗・コンデンサ・コイルを直列にすると次のようになる。 #img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/coil2.gif) #img(,clear) &mimetex("L \frac{di}{dt} +Ri+\frac{1}{C}{\Bigint}^{t}_{0} i dt +V_{CO} =v(t)"); **RC回路の現象と性質 [#ca8bdce1] 抵抗RとコンデンサCの直列回路に、直流電圧をかけるみる。 #img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/coil4.gif) #img(,clear) 電流iとEの関係は次の式で表される。 &mimetex("Ri+\frac{1}{C} {\Bigint}^{t}_{0} i dt =E"); 左辺の第1項が抵抗の両端の電圧、左辺の第2項がコンデンサ両端の電圧、右辺がバッテリの電圧である。 コンデンサ電圧は電流の積分に関係するが、積分の範囲はスイッチが入った瞬間の時間を0として、任意の時間tまでとする。ただし、最初にコンデンサは電荷を蓄えていないものとする(つまり、VSUB{CO};=0とする) コンピュータにこの積分計算をさせるには、数値計算の形に直した方がよい。 &mimetex("RI_n+\frac{1}{C} \bigsum^n_{m=0} I_m \Delta T =E"); &mimetex("\bigsum^n_{m=0} I_m");の意味は次のように滑らかに変化する電流のグラフであり、&mimetex("\bigsum^n_{m=0} I_m \Delta T");は面積を計算することである。 #img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/coil8.gif) #img(,clear) コンピュータでは次のような式に変形してからの方が計算が楽だろう。 &mimetex("RI_n+\frac{1}{C}I_n \Delta T+ \frac{1}{C}\bigsum^{n-1}_{m=0} I_m \Delta T=E"); *コイルと電力の関係 [#e9a268c1] コイルに交流を加えると電流が電圧より90度遅れることはすでに言及した。それによってさらに不思議な現象がコイルに起こる。結論からいうと、コイルに電流が流れても電力が消費されないのである。そして、それが電気機器の性能のよさの指標となる力率の考え方と係わってくる。 抵抗に電流が流れると、抵抗は必ず電力を消費して熱を発生する。しかし、コイルに電流が流れても電力は消費されない。もっとも、コイルにも若干の抵抗はあるわけだが、それを無視すればコイルにはリアクタンスがあるだけで、リアクタンスは電力を消費しないのである。 電力Wというのは、次の式で表される。 &mimetex("W=I^2R=IV");~ (電圧VはEと表記されることがある) これから、負荷で消費される電力は、負荷に加えられた電圧とそこを流れる電流の積であることがわかる。これをコイルに当てはめてみると次のようになる。 電力のマイナス量とプラス量が繰り返されていることがわかります。つまり、コイルでは電力の出し入れをしているのである(コイルもコンデンサのように充放電をしている)。 #img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/coil_w.gif) #img(,clear) *参考文献 [#s730c7c1] -『ズバリ出る4級アマチュア無線問題集 '92〜'93』 -『たのしくできるやさしいアナログ回路の実験』 -『イラストで電気のことがわかる本』 -『量子コンピュータへの誘い』 -『図解・わかる電子回路』 -『アマチュア無線百科 新版』 -『はなしシリーズ 電子工作のはなし[第2版]』 -『はじめて学ぶ手ほどきデジタル回路』 -『まるごと覚える4級アマチュア無線 ポイントレッスン』 -『ビギナーズ・トランジスター読本』 -『ゴロ合わせでスピード合格!第2種電気工事士筆記試験』 -『第4級ハム国試 要点マスター2005』 -『初級アマチュア無線 問題と解説』