*目次 [#l73b650e] #contents *品質管理の定義 [#h24384f0] **ISO 9000:2000(JIS Q 9000:2000)による定義 [#xa1ae5c1] ISO 9000:2000(JIS Q 9000:2000)「品質マネジメントシステム−基本及び用語」において、品質マネジメントと品質管理を区別して次のように定義されている。 -品質マネジメント(quality manegement) --品質に関して組織を指揮し、管理するための調整された活動。 -品質管理(quality control) --品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメントの一部。 **JIS Z 8101:1981による定義 [#zf9ba7da] 1999年5月に廃止されたJIS Z 8101:1981では次のように定義されている。 -品質管理 --買い手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作り出すための手段の体系。 --品質管理を略してQCという。 --また近代的な品質管理は統計的な手段を採用しているので、特に統計的品質管理(Statistical Quality Control:SQC)ということがある。 *品質管理 [#if9c3be9] -クレームや不良の発生データを全社的に収集し、お客様への対応や原因の追究、再発を防止する具体的な方法の立案など、複数の部署を巻き込んだ活動のリーダーシップを取ることが必要である。 -ISO9000シリーズの社内事務局の機能や、社員の品質管理教育なども担当することも多い。 *品質管理の歴史 [#t2d46329] **日本 [#f4baf378] -第2次世界大戦後に、[[アメリカ]]から日本に導入された品質管理は、統計的品質管理(SQC)といわれるものであった。 -1950年にデミング博士が来日する。 --企業における品質管理活動について製品の品質に重点を置いて、‐暖饉圓陵澣瓩鯆敢此ΩΦ罎掘↓⊂暖饉圓陵澣瓩鯔足させる品質の製品を設計し、設計通りの製品を生産し、だ宿覆鮠暖饉圓鉾稜笋垢襪箸い4つの企業内活動を示した。これはデミングのサイクルと呼ばれるものである。 -1954年にジュラン博士が来日する。 --その頃にはSQCの普及発展しており、TQCの基礎となった。 *品質管理で扱う各種品質 [#m46407eb] ''QC(Quality Control:品質管理)''とは、よい商品を作るための管理技術のことである。 品質管理で扱う品質には、次のようなものがある。 **企画・設計の品質 [#k274a55f] -製品の仕様、性能、概観を「企画・設計の品質」という。 -製造メーカーから見れば「お客様が買ってくれるだろう」と考えて作りこむ品質なので、「狙いの品質」または「適合の品質」ということもある。 -企画・設計の品質は、会社としてこのようなものを出そうという品質で、これを向上させようとすると一般に価格が高くなる。 -設計品質は製品規格・原材料規格など品質規格に規定されるもので、「よい製品とはどんなものか」を品質特性について規格値などで具体的に示したものである。 **製造の品質 [#s971e329] -同じ種類の製品でも製造の段階で品質がばらつくので、そのばらつきの度合いを「製造の品質」という。また、「できばえの品質」または「ばらつきの品質」ともいう。 -製造の品質は、企画・設計の品質と実際にできた製品の品質との差異をいい、これが向上して設計の品質に近づき、不良が減れば一般に価格は安くなる。 -製造品質はねらった設計品質において、できあがった製品がどの程度合致しているかを示すものである。そのため''適合の品質''とも呼ばれる。ロットまたは工程の合格率(あるいは不適合品率)、ロットまたは工程の平均値とばらつきで表される。 **サービスの品質 [#f7285288] -製品が故障したり、不具合になったとき、どんなアフターサービスが受けられるようになっているかの度合いを「サービスの品質」という。 -サービスの品質を向上させるには、サービス網の確立、サービス技術者の養成、交換あるいはサービス部品の準備確保などが必要となる。 **機能品質と代用品質 [#oaef5982] 買い手である顧客が要求する品質は、使用段階での機能(働き)に関する品質であり、''真の特性''を持つ。真の特性は性能特性として測定できるため、真の特性で規定される品質を''機能品質''という。 しかし、直接測定することが困難なものもある。例えば、肌触りや使いやすさなどといった人の感性によって評価・判断される''官能特性''などである。こういったものは直接計測が困難であるため、技術的に翻訳される。このような特性のものを''代用特性''という。よって、計測困難なものは代用特性に置き換えて設計、規定された品質規格を基準として製造が実行される。 **消費者向けの品質 [#r4e28c1c] 消費者の要求する品質を満たしていなければ売れなかったり、売れても不満が残ってしまう。そこで、従来の生産者の立場を優先したプロダクトアウトの考え方ではなく、消費者志向のマーケットインの考え方を重視した活動が企業存続において必要である。 また、消費者の品質要求が多様化している傾向からも、設計や生産の方式を合理化しなければならないといえる。 **社会的な影響を考えた品質 [#z79e98c1] 大量生産・大量消費の時代では、製品の社会に対する影響も大きくなる。個人が要求する品質だけでなく、個人周辺である社会が要求する品質も満たす必要がある。こうした社会が要求する品質を過程に分けると次のように分類される。 +生産の過程での品質問題 --工場廃棄物、[[振動]]、[[騒音]]、省エネルギー +使用の過程での品質問題 --使用中の変質、第三者に対する危害、保守サービス +使用後の品質問題 --ゴミ公害、環境保全、[[リサイクル]] [補講]欠陥製品を使用した者または第三者は、その欠陥のために受けた損害に対して製造業者や販売業者が賠償責任を要求することができる。この法律を''製造物責任法([[PL法]])''という。 ◇ *よりよい製品作りのための心構えと行動 [#ac6d88ab] **ほうれんそう [#f8653595] 企業は、多くの従業員で組織が構成されている。そのため、上司からの指示と命令の下で業務が遂行される。その業務の流れを円滑にするための潤滑油的な役割を果たすのが、''報告・連絡・相談(ほうれんそう)''である。指示・命令されたことに対して、上司や同僚、業務を依頼した取引先に、タイムリーにその経過や現状、そして結果を知らせることである。 流動化するビジネスの現場では、不測の事態が発生することが多い。この不測の事態の被害を最小限にするために、この「もうれんそう」は大切である。 ***報告・連絡・相談のポイント [#z96fb193] 報告・連絡・相談は、いずれも5W1Hのポイントを押さえ、正確かつ簡素かつ明瞭かつ具体的にすることが必要である。できる限り具体的な数字で表現するとよい。 -報告のポイント --報告のタイミング ---課せられた業務が終了した時点である。 ---業務が長期に渡る場合は、業務の進歩状況(進み具合)、そして今後の取り組み方などについての中間報告もする。 ---あらかじめ決められた納期が守れない場合や業務遂行過程でミスやトラブルが発生した場合は、タイムリーに報告して、指示を仰ぐ。 --報告の方法 ---口頭や書面によるものなどが考えられる。 ---必要に応じて現物や試料、図やグラフなどを活用すると効果的である。 -連絡のポイント --連絡の方法 ---連絡する相手・内容・重要度・緊急度などの状況を考慮して、適切な方法を選ぶ。 ---連絡を密にすることで、トラブルを未然に防いだり、万が一トラブルが発生しても被害を最小限に押さえられる可能性が増す。 -相談のポイント --相談の方法 ---何を相談したいのかを明確にし、必要があれば試料やデータなどを準備する。 ---また、解決に向けての自分の考えや対応策を用意しておけば、より適切なアドバイスを受けることができるだろう。 **5W1H [#u26d2a40] 常に5W1Hの6つの要素が盛り込まれているかという視点から行動や実体を見つ直し、落ち度がないように心がけることが大切である。 **三現主義 [#fd8814df] ''三現主義''とは、現場・現物・現実の3語をまとめた表現である。「経営管理や改善の基本が、'''現場'''で'''現実'''を見ながら、'''現実的'''に検討することが重要であること」を示す言葉である。 この三現を大切にすることにより、問題の解決、種々の改善をより着実に進展させることに結び付く。 **5ゲン主義 [#k0a13f7d] 三現主義に原理・原則を加えて、''5ゲン主義''と表現することがある。この「ゲン」はカタカナで表記するのが一般的である。 -原理 --事象やそれについての認識を成り立たせる根本となる仕組み -原則 --多くの場合に当てはまる基本的な規則や法則 現場において単に眺めていても問題は発見・理解できない。そこで三現主義を実施する中で、原理・原則に照らし合わせて、ある種の基準を持って物事を見ることにより、問題点が浮き上り、事実がよくみえることができる。 *統計的品質管理 [#f3b9a50c] 全社的品質管理を進めるには、いつも事実に基づいて行動することが大切である。このために、調べたい事柄を正しく表しているようなデータを集め、これを正しい方法で、整理して事実を掴むことが必要である。 そこで、よい商品を作るという仕事の中で、特に統計手法を有効に使おうとする活動を''SQC(Statistical Quality Control:統計的品質管理)''という。そして、品質管理のために使われる統計手法を''QC手法''という。 *品質保証 [#qa46fd3e] ''QA(Quality Assurance:品質保証)''とは、お客様が安心して、満足して買うことができ、長く使うことができることを保証することである。品質保証をする責任は生産者にありますが、どんな品質を要求するかという情報を与える責任は使用者にある。 **品質至上 [#a529548b] 品質第一の考え方を強調して、さらに徹底したものとして''品質至上''という表現がある。 物作りにおいては、品質はもちろんのこと、安全も必ず確保されなければならない。安全を基板として、その範囲内で諸活動を実施することになる。 **SWQC [#a6c61242] QC活動を支援するソフトウェアである''SWQC(SoftWare Quality)''が、ソフトウェア業界において定着しつつある。 *管理 [#w3ce0158] ''管理(control)''とは、ある仕事を目標どおり達成するための効果的な方法のことである。例えば、製造部門の品質管理とは、目標通りの品質を持った製品を生産するために、安定した工程を作り上げることをいう。 **PDCAサイクル [#sef73c2e] 管理を進めるには、次の4つの手順がある。これを''管理のサイクル''という。 |手順1|Plan|計画|目標達成に必要な計画を立てる。| |手順2|Do|実施|計画通りに実施する。| |手順3|Check|評価|実施の結果を測定・解析し、評価確認する。| |手順4|Action|処置|評価の結果が計画に比べて差があれば、必要な修正処置を取る。| このP→D→C→A(''PDCAサイクル''という)からなる管理のサイクルを、休みなく回転しながら、前進させることが管理の活動を続けることになる。 また、過去の経験が十分にあったり、技術が確定されたりしている場合には、PDCAのPlan(計画)の代わりに、すでに明確になっているよい方法を標準化(Standardization:S)して与えることがある。このときのサイクルが''SDCAサイクル''である。その標準通り仕事をしていればほとんど問題はないが、時には問題が発生することがある。それは標準と異なるやり方で仕事をした場合や、標準通りの仕事をしても標準自体が適切でなかった場合などである。 **QCDとQCDS [#zc56de19] お客様に喜んで買ってもらえる製品は、品質・価格・納期(時期)の3条件が、備わっていなければならない。製造メーカーはいかにして、この3条件を備えた製品を作るかで、他社と競争しているといえる。 この3つの条件を略してQ・C・Dと表記する。QはQuality(品質)、CはCost(価格)、DはDelivery(納期)を意味する。この3つの総合的な品質のことを''QCD''という。 さらに、Sefety(安全)を加えて、''QCDS''と考えることもある。 *改善活動 [#a010ca85] ''改善''とは、経営システム全体またはその中の一部分を常に見直し、能力の向上を図る活動のことである。''改善活動''というと、現状の作業などにおける問題点を発見し、問題を解決してよりよい作業の状態を生み出す活動のことである。 [補講]改善(KAIZEN)という単語は、海外でも通じる。 **3ム [#b9cb2c6f] 改善活動においては、要求される製品やサービスの品質を確保することができる仕事のやり方を常に考える必要がある。代表的な改善の方法として、''ムダ・ムリ・ムラ(3ム)''に着眼して、それらを追及して排除する方法がある。 **QCサークル [#c620b909] 改善活動が盛んなか企業では、品質の改善、工程の改善、仕事の改善などを目指す組織的かつ継続的な活動を行う。同じ職場内で、品質管理活動を自主的に行う小グループのことを''QCサークル''という。またこうしたグループによる活動を''小集団活動(QCサークル活動)''という。 **QCストーリー [#x2eb4bef] さらに、[[QCストーリー]]などの問題解決手段を活用するなど、特徴的な活動を行っている企業もある。このような改善活動の考え方は''継続的活動''と呼ばれ、ISO 9000シリーズやISO 14000シリーズの原則になっている。 *工程 [#p367ce68] 製品はどれも、急に製品の形に出来上がるわけではなく、いくつもの加工段階を経て製品になる。これらの段階のことを、品質管理では''工程(プロセス)''という。 一つ一つの工程を考えるとき、インプットとアウトプットの概念が重要である。 例1:加工の工程のとき、原材料がインプットであり、加工後のアウトプットである。 ◇ 例2:事務スタッフの業務であれば、ある特定の情報がインプットであり、作成した資料や分析した情報などがアウトプットである。 ◇ つまり、工程はインプットに付加価値を加えてアウトプットとして出力すると考えることができる。 **インタフェース [#v36d6780] 工程の繋がりを''インタフェース''という。特に、ある工程に直接つながって、前後関係にある工程のことを前工程、後工程という。 品質管理の活動において、工程に対する考え方を表す格言として、「品質は工程で作りこめ」「後工程はお客様」などがある。 **4M [#fe36acd6] 工程の要素を追求していくと、多くの場合、Man(人)・Machene(機械・設備)・Material(原材料)・Method(方法)の4つがその構成要素として考えられる。この4つをまとめて、''生産の4M''という。つまり、よい仕事をするには、この4Mを確実に管理すればよいのである。 *QC手法 [#k2997e6a] -7つ道具 --量的な面での分析(定量分析)に用いる手法 -新7つ道具 --性質面な面での分析(定性分析)に用いる手法 **QC手法の7つ道具 [#g368cdda] QCサークル活動は、問題点(テーマ)を見つけ出し、解析、再発防止、そして管理の定着へと進めていく。そのためには、職場において、QC手法を習得し、QC手法の実践活用をやっていかなければならない。その問題点を解決していくQC手法には次の7手法があります。これらを''QC手法の7つ道具''という。 -[[パレード図]] -[[特性要因図]] -[[ヒストグラム]] -[[層別]] -[[散布図]] -[[チェックシート]] -[[グラフ・管理図]] [補講]層別の代わりに、管理図とグラフを分割して考える場合もある。 **QC手法の新7つ道具 [#x097df55] QC7つ道具は、主に数値を扱うものが中心の手法である。一方、数値によらない言語データを扱う手法として''新QC7つ道具''もある。 -[[親和図]] -[[系統図]] -[[PDPC]] -[[マトリックス図]] -[[マトリックスデータ法]] -[[アロー図]] -[[関連図]] *事実に基づく判断 [#rba15153] 品質管理においては、事実に基づく判断、即ち過去の技術や経験だけに頼らずに、事実をデータ(観測地・測定値)として正しく把握して客観的な判断を下すことが大切である。 つまり、品質管理では''事実に基づく管理(fact control)''を重視しなければならない。経験や勘だけに頼らずに、客観的な事実を示すデータを取り、それを整理し情報を得て、その情報を基に処理や決定を行うのである。同じ条件・状態で実験や作業を行ったつもりであっても、把握しきれていない様々な要因によって、結果が必ずばらついてくるからである。よって、取られたデータには常にばらつきが含まれているわけである。しかしながら、個々は一見不規則だが、うまく整理することにより規則性を発見できる。その結果、データのばらつきに惑わされることなく、真の姿を捉えることができる。 数個のデータだけで良否を決めてしまうと、処置を誤る可能性がある。データに現れた結果を鵜呑みにしないで、データのばらつき具合を見て、たまたまそうなったのか、あるいは本当にその結果通りであるかということを考える必要がある。 このようにデータはばらつきを持つため、ばらつきの存在を考慮してサンプル(資料・標本)を測定して得たデータから、母集団についての何らかの判断をする必要がある。 #img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image3/sampling.jpg) #img(,clear) **データと情報 [#j5bc74be] データとは、解析対象となるものを観察、あるいは測定した結果を記録したものである。一方、情報とは、解析の目的に合致するようにデータを加工し、データから取り出したものである。 よって、データが持つ情報の量と質を確保するためには、対象を正しく観察し、記録し、整理することが大切である。 **データの種類 [#i9c9df9a] 品質管理で取り扱うデータには、計数値と計量値がある。 -計数値 --1個、2個のようにカウントする値 ---例:キズの数、不適合品の数、事故の件数、欠席回数、死亡者数など -計量値 --連続量として計る測ることができる値 ---例:重さ、長さ、時間、温度、厚さなど **データを取る目的 [#fc94ea44] 品質管理におけるデータを取る目的は、次に挙げられる。 +工程の管理 --工程の条件が標準通りになっているかどうかをチェックするため。 +工程の解析 --不適合やばらつきを減少させるためには、工程のどの条件を変えたらよいかを見出すため。 +検査 --製品・部品・材料などのロットを合格とするか、不合格とするかを決めるため。 +品位の推定 --粉塊混合物などの成分含有率を求めるため。 +など このようにデータを取る目的は、その結果によって何らかの行動や処置を取ることであり、処置を取る対象は測定を行った一部のものに対してではなく目的としているもの全体(母集団)である。よって、データに基づいて事実を把握するためには、事実をゆがめてデータを取ったり、自分の都合のよいデータを取ったりしてはならない。 **判断のための統計方法 [#z1801fe2] 品質管理において統計的な考えが重要なのは、品質とは絶えず変動するからである。品質の変動、即ちばらつきには統計的な規則性があるのである。個々の品質の良し悪しはもちろんだが、品物の集団としての良し悪しを品質の分布の姿として'''統計的に捉えて'''、'''統計的な推測に基づいて行動する'''のが統計的品質管理の基本である。 統計的に捉えるためには、個々のばらつきではなく、集団全体に注目して全体としての規則性を求めることを意味する。なぜならば、個々のものはたくさんの解析不可能な原因によって不規則にばらつくが、集団全体を見ると全体に対する影響を与える何らかの原因を見出すことができるからである。 **サンプルの取り方 [#o857c607] 個々の対象を集めた集団全体を''母集団''という。母集団全部からデータを抜き取るのではなく、母集団から一部の個々の対象を選ぶ。この作業を''サンプリング''といい、選ばれた対象を''サンプル''という。そして、サンプルに対して測定を行い、データを集める。 #img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image4/sample.jpg) #img(,clear) 例1:受入検査の場合は、たくさんの品物の中からいくつかのサンプルを取り出し、ある品質特性を測定し、その結果からロット全体を受け入れてよいかどうかを判断する。このとき、測定された個々のデータが規格を満たしているかどうかということよりは、それらのデータから見てロット全体が満足なものであるかどうかを推論することが目的である。 ◇ 例2:製造工程で一定期間ごとにサンプルを取り、ある品質特性を測定し、管理図を書いている場合には測定した個々の特性データを知ることが目的ではなく、こうして得られたデータを統合してその工程が安定状態にあるかどうかを知り、異常が起きていればできるだけ早期に発見しようとすることが目的である。 ◇ 以上のように、サンプルは母集団の姿を偏りなく正しく代表するように取らなければならない。この無作為により抜取を''ランダムサンプリング''と呼ぶ。また、ばらつきを考慮した統計的な考え方を積極的に有効に利用することも重要である。 母集団からサンプルを抽出し、それらを測定することでデータが得られる。このように母集団からサンプルを抽出する行為を''サンプリング''という。サンプルを測定して得られたデータから母集団の姿を捉えることが目的なので、サンプルは母集団の姿をできる限り反映していなければならない。そのため、偏りなく無作為にサンプルを取る(一様ランダムに選択する)必要がある。これを''ランダムサンプリング''という。ランダムサンプリングとは、母集団を構成する要素が、いずれも等しい確率でサンプルに含まれるようなサンプリング方法のことである。 [補講]コンピュータでは[[samplingアルゴリズム]]が用いられる。実際にサンプリングを実現化するアルゴリズムがあるため、コンピュータを使ってもよいことになる。 **データを取るときの注意点 [#d4dc6153] 事実を正しく把握し、管理・改善などを効果的に進めるために、データをとる場合は次のことに注意する。 +データを取る目的、得られたデータによって処置すべき対象(母集団)を明確にしておく。 +データの履歴(5W1H)を明確にしておく。 +できるだけランダムに取られたサンプルを測定しデータを得る。つまり、ランダムサンプリングされたサンプルからデータを取る。 +品質(結果)とそれに影響する原因(要因)とが互いに対応するようにデータを取る。 **データのまとめ方 [#xc343d67] 同じ条件・状態で実験や作業を実施したつもりでも、データはばらついてしまう。そのため、母集団の状態・傾向を、サンプルを測定して得たデータから掴むときには、[[平均]]だけでなく、ばらつき程度も見る必要がある。 *テスト [#r66e15bd] **抜取検査 [#a735b4b6] 抜取検査の考え方は、検査ロットから所定の検査方式を用いてサンプルを抜き取り、試験し、その結果をロット判定基準と比較して、そのロットの品質の可否を判断するものである。 ***検査方式 [#i905c6a1] 検査方式は、統計的品質管理の典型的なツールであり、次のような種類がある。 -計数抜取検査 --サンプル中の不良品の数または欠点数を合否判定基準とする方法。 -軽量抜取検査 --サンプルの特定の品質特性に関する平均値で事前の基準値と比較し、合否の判定を行う方法。 -基準型抜取検査 --生産者・消費者の両者が満足するための方法。 --最も基本的な検査方法。 -選別型抜取検査 --検査結果が不合格のロットは全数検査を行い、良品だけをパスさせる方法。 -連続生産型抜取検査 --連続生産される製品に適用される。 --最初の段階では各個に検査し、良品が一定個数続けば抜取検査を行い、不良品が発生すると再び個別検査に移行する検査方法。 -調整型抜取検査 --受取側がロットの品質などに応じ検査基準を、ナミ、キツイ、ユルイと調整できる検査方法。 -生産者危険 --なるべく合格させたいのに、よいロットが誤って不合格になる確率。 -消費者危険 --なるべく不合格したいのに、誤って合格になる確率。 -OC曲線(Operating Characteristic curve) --抜取検査方式の性質を表す。 --縦軸にロットの合格確率、横軸にロットの品質(例えば不良率など)を取る。 *特性 [#sa58b483] 仕事をした結果を表す項目を''特性''という。そして、数量化された特性を''特性値''という。特に品質の評価の対象となる特性のことを''品質特性''という。 例:製品の特性として次が挙げられる。 +種類、等級、構造 +外観 --傷、割れ、形状・寸法など +性能 --物理的性質 ---強度、粘土、耐電圧など --化学的性質 ---含有率、純度など +信頼性、寿命など さらに、生産量、不適合品数、不適合品率、不適合品の発生による損失金額、時間、納期遅れの件数、生産性、コスト、故障件数、故障率などのように管理の対象となる特性(あるいは特性値)もある。 **代用特性 [#a13961a9] 品質特性だけで管理できれば楽であるが、そうでない場面もある。 例:品質特性であるA成分の含有率で反応工程を管理するとき、A成分の含有率の測定に3〜4日もかかれば反応工程を管理するための特性値としてなじまない。このような場面では、反応中の泡の状態など、工程の状態がそのつどわかる特性を用いた方がよい。 ◇ このように、目で見て、手で触って、耳で聞いて、口で味わうなど人間の五感で感じる特性(値)のことを''代用特定(値)''という。代用特性(値)は真の特性(値)と創刊のあるものでなければならない。 *要因 [#r8deb7b4] 品質(結果)にばらつきを与える原因系の総称を''要因''という。要因には計数的な要因と軽量的な要因がある。 例: -計数的な要因 --機械や原料メーカーなど属性による条件要因 -軽量的な要因 --炉内温度や加圧時間など連続値で変わる条件要因 品質に影響を与える要因を正しく捉えるためには、4MやQCDSなどの項目を考慮すると有効である。特に、4Mは品質に最も影響を及ぼす要素であるため、品質問題が発生しデータを取る必要があるときはまず4Mから一般的に追求される。 **偶然原因と異常原因 [#nd14395d] 知り得るデータのばらつきには、母集団の変化に起因するいつもと違う''異常原因によるばらつき''と、突き止められない''偶然原因によるばらつき''がある。 品質管理ではばらつきをこの2つに分類し、日常のデータの中から偶然原因によるばらつきの大きさの程度を把握して、母集団である工程やロットの条件変化を検出することが重要である。 **時系列における変動 [#mceab81f] ある特性を時系列で見た場合(例えば[[折れ線グラフ]]や[[工程能力図]]など)、様々な型に分類される。その型に応じて、要因の調べ方も変更すると効果的な場合がある。 例えば、型が次のような状態であるときにおける、有効な調べ方を示す。 +突然変異型(にわかに水準が高くなり、下がらない場合) --要因の何が変わったのかに注目する。 +発散異常型(時々気まぐれのように異常が発生する場合) --要因がどういうときにいつもと違うのかに注目する。 +慢性不適合型(目標値まで下げようとしても下げらない場合) *対策についての水平展開 [#x5b23778] 問題に対して対策を実行し再発防止ができたとしても、類似の製品や工程において同じような原因で同類の不適合品や欠陥の発生する危険性はないかどうかを検討し、欠点を未然に予防する対策について水平展開をすることは重要である。 さらに積極的な活動として、非常によい実績を示した場合には、なぜそんなによいのか、どんな条件で行うとよい結果が得られるのかを探求する考えを持つのも有効である。 *品質管理とマナー/コンプライアンス [#z9d60d78] 多くの人が仕事に従事する企業には、企業を円滑に運営していくために、また職場生活を充実したものにするために決められたルールがある。そのルールを定めたものが就業規則であり、各企業によってその内容は独自のものになっている。 企業人として就業規則を順守することは当然だが、それに記載されていないことであっても、企業人として常識的に守らなければならないことがある。これがマナーと呼ぶ。また、業界や世間ごとに、常識・道徳・倫理は異なる。これが[[コンプライアンス]]である。 **マナー [#c2cefa59] -時間を守る --約束した時間には遅れない。 --就業開始時間から直ちに業務が開始できる状態になっていなければならない。 --休息時間と業務時間のけじめをつける。 -挨拶をする --職場での人間関係を円滑に保つため。 -言葉遣いに注意を払う --敬語・謙譲語・丁寧語を正確に使う。 -服装をきちんとする --清潔な身だしなみ --物作りの職場では危険が伴なう作業があるため、制服はその危険を考慮して決められているのが一般的である。そのため決められた服装を着用することは重要である。 -公私のけじめを付ける --機械設備からメモ用紙に至るまで、会社の財産に着いては公私のけじめを付けなければならない。 -業務に対する心構えを持つ --企業からは業務遂行の対価として賃金が支払われる。つまり、その業務のプロとして認められていることである。プロとしての心構え(自覚)をしっかり持ち、業務遂行に当たらなければならない。 **5S [#n94c2d0f] 職場の管理の前提になる「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」について、日本語ローマ字表記の頭文字を取って、''5S''と表現される。 「整理」「整頓」「清掃」「清潔」の4Sを特に意識することなく、自然体で実施展開できるまでに定着させるために4Sの他に「しつけ」のSが加えられる。 *参考文献 [#fbb528f4] -『絵とき 自家用電気技術者実務読本(第4版)』 -『試験対策 要点整理 第2種情報処理』 -『ソフトウェア開発技術者試験対策 コンピュータサイエンス補足資料+午後演習問題』 -『品質管理の演習問題と解答 QC検定試験4級対応』 -『品質管理教本 QC検定試験3級対応』 -『女子高生ちえの社長日記』