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  • トランス へ行く。

*目次 [#ed944e6b]

#contents


*トランス [#e976068e]

-=変圧器
-[[鉄]] or [[フェライト]]でできたコアと呼ばれるものに[[コイル]]を巻き付けたもの。
-コイルの一方(''一次コイル''という)に交流電圧をかけると、他方(''二次コイル''という)に電圧の大きさが変化した交流電圧が生じる。
-トランスには変圧器と変成器の2つがあり、用途が異なるので理科の教科書では区別されているが、仕組みはまったく同じなので、当サイトではどちらもトランスとして解釈する。 
-トランスとは、電流が発生させる作用と、磁界が電流を発生させる作用(電磁誘導)とを組み合わせた仕組みの電子部品である。フランスのゴーラーとイギリスのギプスの2人で、1882年に発明された。
--例えば、電圧が6Vの電球を100Vで点火したい時、直列に抵抗器を繋いで電球に加わる電圧が6Vになるようにするとたいへん無我が多い。そんなとき、トランスを使えば無駄がほとんどない。電球の電流が0.5Aだとすれば、前者の場合は100Vの電圧から0.5A流さなければならないが、トランスを使えば100V側の電流はわずか0.03Aで済む。 
-半導体部品が目覚しく進歩しているのに対して、電源トランスには大きな変化がない。 
-電子部品の中で、いまだに健在である最大の理由は、変圧と絶縁が同時に実現できることになる。 
-小信号の絶縁に[[フォトカプラ]]が多く使われる。これはあくまで電圧信号の伝達に使う素子で、電力は伝達できない。

*トランスの動作原理 [#u9efe5b8]

#img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image4/trans.png)
#img(,clear)

#divid(s,thorem)
[法則]~
1次電圧をVSUB{1};、1次電流をISUB{1};、巻き数をNSUB{1};、2次電圧をVSUB{2};、2次電流をISUB{2};、巻き数をNSUB{2};とすると、次が成り立つ。~
&mimetex("V_1 : V_ 2 = N_1 : N_2 = I_2 : I_1");
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明]

1:一次コイルに交流電圧がかかることによって、一次コイル側に電流iSUB{1};が流れ、磁束φがコアに生じる。

 電流iSUB{1};は時間変化するので、一次コイル側には自己誘導起電力eSUB{1};が生じる。

 eSUB{1};の大きさは、交流電圧の大きさとほぼ同じになる。

2:生じた磁束φによって、二次コイル側にも誘導起電力eSUB{2};が生じる。

 このとき、一次コイルの巻き数をNSUB{1};、二次コイルの巻き数をNSUB{2};とすると、次の式が得られる(磁気誘導起電力の式を巻き数倍した結果)。

-&mimetex("e_1 = - N_1 \frac{d \phi}{dt}");
-&mimetex("e_2 = - N_2 \frac{d \phi}{dt}");

 この2つの式から、次が得られる。

&mimetex("\frac{e_1}{e_2} = \frac{- N_1 \frac{d \phi}{dt}}{- N_2 \frac{d \phi}{dt}}");~
&mimetex("\frac{e_1}{e_2} = \frac{N_1}{N_2}"); □
#divid(e,proof)

#divid(s,proof)
[別証]誘導起電力の式は次の通りである。

&mimetex("E=4.44 Nf \phi_m");

これを使って、コイル1とコイル2のそれぞれに誘導される起電力を考えると、次のようになる。

-&mimetex("e_1=4.44 N_1 f \phi_m");
-&mimetex("e_2=4.44 N_2 f \phi_m");

ここで、fはコイル1に繋がっている電源の周波数、φSUB{m};は鉄心を通る磁束の最大値である。これらはどちらのコイルでも共通する。

よって、起電力の比は次のように計算できる。

&mimetex("\frac{e_1}{e_2} = \frac{4.44 N_1 f \phi_m}{4.44 N_2 f \phi_m} = \frac{N_1}{N_2}"); □
#divid(e,proof)

#divid(s,proof)
#divid(s,notice)
[補講]トランスの巻線の巻数を少なくすると、コイルにかかる費用は安くなるが、鉄心にかかる費用が高くなる。

誘導起電力の式は次の通りである。

&mimetex("E=4.44 Nf \phi_m");

同じ誘導起電力Eを生じさせるためには、巻線Nを小さくすると、周波数fは一定として、磁束の最大値φSUB{m};を大きくする必要がある。~
しかし、変圧器の鉄心の磁束の最大値を大きくすると、やがて鉄心が磁気飽和する。磁気飽和した状態で使い続けると、磁束や電圧や電流のグラフが不安定になってしまう。

磁束の最大値を大きくなっても、鉄心が磁気飽和しないようにするためには、鉄心を太くして磁束をたくさん通せるようにしないければならないのである。 ◇
#divid(e,proof)
#divid(e,notice)

*トランスの損失 [#l308ef0d]

-トランスで変圧するとき、数パーセントの電力損失が起こる。損失は主に鉄心内部の[[うず電流]]によるものである。うず電流を小さくするための工夫として、[[ケイ素]]鋼板を積み重ねるという形式がある。

*トランスの構成要素 [#sdd42363]

**巻線 [#d885b990]

-1台のトランスには絶縁した2つの巻線があり、電源側の巻線を''一次巻線''、負荷側の巻線を''二次巻線''という。
-巻線には直巻と型巻がある。

***直巻 [#sdcb0f37]

***型巻 [#x66e8077]
-電力用には型巻が多く用いられる。
-木製などの巻線にコイルを巻き、後で鉄心脚に挿入するものである。
-円筒巻線と円板巻線は、内鉄形変圧器に用いられる。
--一次巻線と二次巻線が鉄心脚の軸方向に'''同心'''に配置される。
-方形板状巻線は、外鉄形変圧器に用いられる。
--一次巻線と二次巻線が鉄心脚の軸方向に'''交互'''に配置される。

**鉄心 [#jdda9900]

-磁束を通す磁路の役目を持つ。
-材料には、鉄損を少なくするために、厚さ0.23〜0.35mmの薄い方向性ケイ素鋼板(ケイ素含有量3.5%程度)が用いられる。
-大容量の変圧器では、短冊形に切ったケイ素鋼板を積み重ねている。
--これを''積層鉄心(成層鉄心)''と呼ぶ。
-柱上変圧器などの比較的小容量のものには、帯状の鉄板を渦巻き状に巻いた巻鉄心が使われる。

**ブッシング [#d2093f7a]

-巻線を外箱の外部に引き出すための絶縁端子(磁気がい管)である。

**その他の付属装置 [#kf7f7e34]
***コンサベータ [#i57727b5]
-絶縁油の劣化を防止する。
-コンサベータの方式には次の3種類が存在する。

|方式|特徴|h
|開放式|・構造が簡単。&br;・小容量のトランスなどに用いられる。|
|窒素封入式|・コンサベータに窒素ガスを満たし、油を外気から遮断する。&br;・中容量のトランスなどに用いられる。|
|隔膜式|・ゴムセルで油と外気を隔離する。&br;・大容量のトランスなどに多く用いられる。|

***冷却器 [#jabc605c]
-本体の損失によって発生する熱を大気または冷却水に放出する。


**鉄損 [#u45a40a2]

-≒無負荷損
--厳密には違うが、無負荷損といったら鉄損、負荷損といったら銅損を考えればよい。
-負荷を接続しても、損失は同じ。
-変圧器を励磁することにより、生じる損失。
-'''負荷の割合(利用率)にかかわらず常に一定である。'''
--つまり、トランスの2次側に負荷を接続しない場合でも発生する損失。

#divid(s,thorem)
[定義]鉄損PSUB{i};=ヒステリシス損+過電流損
#divid(e,thorem)


***ヒステリシス損 [#u6c5647a]

-ヒステリシスループによる損失。

#divid(s,thorem)
[法則]&mimetex("P_h = K_h f B_m^{1.6} \sim K_h f B_m^2 \,\[W / kg\]");
-KSUB{h};:鉄心材質によって定まるヒステリシス定数
-f:周波数、[Hz]
-BSUB{m};:最大磁束密度、[T]
#divid(e,thorem)

***渦電流損 [#o66f5762]

-磁束の変化により、鉄心内に生ずる渦電流による損失。

#divid(s,thorem)
[法則]&mimetex("P_e = K_e t^2 f^2 B_m^2 \, \[W/kg\]");
-KSUB{e};:鉄板の厚さ、抵抗率によって定まる定数
-f:周波数、[Hz]
-BSUB{m};:最大磁束密度、[T]
-t:鉄板の厚さ、[m]
#divid(e,thorem)

**銅損 [#k869dc5a]

-負荷電流が流れることにより、巻線の抵抗に生ずる損失。
-'''負荷の割合(利用率)の2乗に比例する。'''
--例えば、定格負荷時(100%の負荷)の銅損を1とすると、50%負荷時の損失は1/4である。

#divid(s,thorem)
[定義]銅損PSUB{c};=抵抗損(ジュール熱)
#divid(e,thorem)

***抵抗損 [#x7c6b82b]
-巻線の抵抗による損失(ISUP{2};R)。
***漂遊負荷損 [#h4658bb1]
-負荷電流が流れたときの漏れ磁束による損失。

*トランスの効率 [#s08e9a8f]

-効率は出力と入力の比で表される。

|実測効率|実際に測定して算出する。|
|規則効率|規格で定められた規則に従って損失を決定し、算出する。|

-変圧器の効率は規約効率を採用するのが標準である。

**規約効率の定義式 [#f79b02b7]

#divid(s,thorem)
[定義]効率をηとすると、次が成り立つ。~
η~
={(出力)/(入力)}×100~
={(出力)/(出力+損失)}×100~
&mimetex("= \frac{Output \, \[kW\]}{Output \, \[kW\] + Loss \, \[kW\]} \times 100 \, \[%\]");~
={(出力)/(出力+鉄損+銅損)}×100~
={(入力−損失)/(入力)}×100
#divid(e,thorem)

#img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image4/kouritu.png)
#img(,clear)

**全負荷時の効率 [#x29d3827]

#divid(s,thorem)
[公式]全負荷時のトランスの効率ηは、次の式で計算できる。~
&mimetex("\eta = \frac{W \cos{\theta}}{W \cos{\theta} + P_i +  P_{cn}} \times 100 \, \[%\]");
-W:トランスの容量、[kV・A]
-cosθ:負荷力率
-PSUB{i};:鉄損、[kW]
-PSUB{cn};:全負荷(定格負荷)時の銅損、[kW]
#divid(e,thorem)

**α負荷時の効率 [#adc027a1]

#divid(s,thorem)
[公式]利用率αのときのトランスの効率ηSUB{α};は、次の式で計算できる。~
&mimetex("\eta_{\alpha} = \frac{\alpha P \cos{\theta}}{\alpha P \cos{\theta} + P_i + P_c} \times 100 \, \[%\]");~
&mimetex(" = \frac{\alpha P \cos{\theta}}{\alpha P \cos{\theta} + P_i + \alpha^2 P_{cn}} \times 100 \, \[%\]");
-α:利用率
--α=(負荷容量 [kV・A])/(変圧器容量 [kV・A])
-P:トランスの容量、[kV・A]
-PSUB{cn};:全負荷銅損、[kW]
--αSUP{2};PSUB{c};:利用率αのときの銅損
-PSUB{i};:鉄損、[kW]
-cosθ:負荷の力率
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明]

&mimetex("\eta_{\alpha}");~
&mimetex(" = \frac{Output \, \[kW\]}{Output \, \[kW\] + Loss \, \[kW\]} \times 100 \, \[%\]"); (∵トランスの効率ηの定義)~
&mimetex("= \frac{\alpha P \cos{\theta}}{\alpha P \cos{\theta} + P_i + \alpha^2 P_c} \times 100 \, \[%\]"); (∵出力=αPcosθ [kW]、損失=(鉄損)+(利用率αのときの銅損)=PSUB{i};+αSUP{2};PSUB{c}; [kW]) □
#divid(e,proof)

#divid(s,proof)
[問]定格容量10[kV・A]、鉄損100[W]、全負荷銅損250[W]の変圧器がある。定格の1/2負荷における効率[%]の値は? 【電験3種】

[解答]

-P=10 [kV・A]
-PSUB{i};=100 [W]=0.1 [kW]
--[kW]に変換しておくこと。
-PSUB{c};=250 [W]=0.25 [kW]
-α=1/2
-cosθ=80 [%]=0.8

&mimetex("\eta_{\alpha}");~
&mimetex(" = \frac{\alpha P \cos{\theta}}{\alpha P \cos{\theta} + P_i + \alpha^2 P_{cn}} \times 100");~
&mimetex(" = \frac{\frac{1}{2} 10 \cdot 0.8}{\frac{1}{2} 10 \cdot 0.8 + 0.1 + (\frac{1}{2})^2 0.25} \times 100");~
&mimetex("=\frac{4}{4 + 0.1 + 0.0625}\times 100");~
&mimetex("=\frac{4}{4.1625}\times 100");~
&mimetex("\approx 0.9609 \times 100");~
&mimetex("\approx 96.1"); ◇
#divid(e,proof)

 利用率によりトランスの効率は変化する。~
 最高効率になるときの利用率は次の通りである。

#divid(s,thorem)
[定理]鉄損(PSUB{i};)と利用率αにおける銅損(αSUP{2};PSUB{c};)が等しいときに、最高効率になる。
#divid(e,thorem)

#divid(s,proof)
[証明]

&mimetex("\eta_{\alpha} = \frac{\alpha P \cos{\theta}}{\alpha P \cos{\theta} + P_i + \alpha^2 P_{cn}} \times 100");~
&mimetex("\eta_{\alpha} = \frac{P \cos{\theta}}{P \cos{\theta} + \frac{P_i}{\alpha} + \alpha P_{cn}} \times 100"); (∵分母・分子をαで割る)

ここで、Pcosθはαの値にかかわらず一定であるため、ηを最大にするためには分母の&mimetex("(\frac{P_i}{\alpha} + \alpha P_{cn})");が最小になればよい。

2数の積は&mimetex("\frac{P_i}{\alpha} \times \alpha P_{cn} = P_i P_{cn}");となり一定である。~
そのため、[[最小の定理]]((最小の定理は、「2つの正の数AおよびBについて、A×Bが一定ならば、A=Bのとき、A+Bは最小となる」である。))より、2数の和&mimetex("(\frac{P_i}{\alpha} + \alpha P_{cn})");が最小となるのは、2数が等しいとき、即ち&mimetex("\frac{P_i}{\alpha} = \alpha P_{cn}");のときである。

よって、最高効率となる利用率αは次の通りである。

&mimetex("\frac{P_i}{\alpha} = \alpha P_{cn}");~
&mimetex("P_i = \alpha^2 P_{cn}");~
&mimetex("\alpha = \sqrt{\frac{P_i}{P_{cn}}}"); □
#divid(e,proof)

#divid(s,proof)
[補講]最高効率となる利用率はわかったので、ηSUB{max};の値は次のようになる。

&mimetex("\eta_{max} = \frac{\alpha P \cos{\theta}}{\alpha P \cos{\theta} + 2P_i} \times 100");

or

&mimetex("\eta_{max} = \frac{\alpha P \cos{\theta}}{\alpha P \cos{\theta} + 2 \alpha^2 P_{cn}} \times 100"); ◇
#divid(e,proof)

**全日効率 [#a510c09b]

#divid(s,thorem)
[公式]トランスの1日中の総合効率を''全日効率''といい、これをηSUB{d};とすると、次の式で計算できる。~
&mimetex("\eta_{d} = \frac{\alpha W \cos{\theta} \times T}{\alpha W \cos{\theta} \times T + P_i \times 24 + \alpha^2 P_{cn} \times T} \times 100 \, \[%\]");
-T:全負荷のα倍の負荷で運転した時間、[h]
#divid(e,thorem)


*トランスの種類 [#y39d0e9b]
**構造による分類 [#w6788dbc]

***内鉄型【ないてつがた】 [#ed99ba04]

***外鉄型【がいてつがた】 [#b18ad16a]

**使用する絶縁材料による分類 [#y34477cd]

***油入【あぶらいり】変圧器 [#kb8c470f]
-電力用には、このタイプが一番多く使われる。
-絶縁油は周囲温度や負荷の変化に伴い、膨張・収縮するので、外箱に開口があると空気が出入りする。これをトランスの''呼吸作用''という。
--トランスの呼吸作用により、絶縁油が空気に触れ、参加して赤褐色の不溶解性の沈殿物(スラッジ)を生じ、絶縁油の絶縁耐力と冷却性能が低下する。

***乾式変圧器 [#wc8d4599]
-鉄心と巻線を油に浸さない空冷式のもの。
-比較的低電圧の小容量変圧器に採用されている。
-保守が容易。
-難燃性を持つ。

#divid(s,proof)
[例]モールド変圧器

-'''巻線'''全体をエポキシ樹脂などの合成樹脂で固めて絶縁を強化したもの。
-ビル・マンションなどの'''屋内用'''変圧器などに多く使われている。

◇
#divid(e,proof)

***ガス入変圧器 [#qbb86065]

-=ガス絶縁変圧器
-絶縁・冷却媒体として、不燃性・無毒・無臭のSFSUB{6};(六フッ化硫黄)ガスを加圧封入した変圧器。
-都市部のビルの地下式発電所などに適用されている。
-不燃。
-省スペース。

**性能による分類 [#p833d79a]

**電源トランス(通称パワートランス) [#x13486a2]

-E-I型鉄心を使った外鉄型トランスと、カットコアを使った内鉄型トランスの2種類がある。
-通常、1次側を商用電源に接続し、2次側を必要な電圧を得ている。
-出力電圧は、1次側と2次側のコイルの巻数比で決まる。 

**オーディオトランス [#n166aed8]

-[[トランジスタ]]を使ったオーディオ回路では、インピーダンスマッチング用としてよく使われる。
-[[スピーカー]]を駆動する出力トランスも真空管時代にはよく使われましたが、トランジスタ時代になってからは出力インピーダンスの低いOTL(トランスなし)回路の出現で姿を消した。
-どちらのトランスも1次側○○Ω、2次側××Ωと、インピーダンス比が表示されている。

**絶縁トランス [#q0e80c0a]

-昔からあるタイプ。
-電圧変換を行うのが主目的。
-[[ノイズ]]対策などは考慮されていない。

**シールドトランス [#y0127896]

-1次巻き線と2次巻き線の間に静電シールドを行ったもの。
-通信関係では古くから用いられてきた。

**ノイズカットトランス [#m5765d4e]

-最初からノイズ防止用として開発されたもの。
--1次と2次のコイルを分離して配置し、コイル間の伝導と静電結合、高周波の電圧誘導などを極めて小さく抑える構造とするため、あらゆる工夫が取り入れられている。
-コモンモードとノーマルモードのノイズに効果がある。

**タイトランス [#re18aef1]

-1次電圧と2次電圧の電圧区分が同じである変圧器。

[例]

|1次電圧|2次電圧|備考|h
|6,000V|3,000V|どちらも高圧((電気設備技術基準では、交流にあっては、600V以下のものを低圧、600Vを超え、7,000V以下のものを高圧、7,000Vを超えるものを特別高圧という。))|
|420V|210V|どちらも低圧|

◇

*低周波トランスと高周波トランス [#i723823e]

 周波数が高いところにはコア無しか、高周波に適したフェライトコアを入れた高周波トランスが使われる。

-低周波トランス 
--AC100Vをそのまま整流して直流(DC140V)に変えた後、高周波インバータで50kHz以上の高周波交流に変換する。
これをトランスで変圧して、再度整流、直流化する。
高周波のためトランスが劇的にコンパクトになる。 
---例:[[スイッチング電源]]
-高周波トランス 
--AC100Vをトランスでまずだいたい必要な電圧に変換してから整流、直流化する。
構成は単純だが、トランスは低周波で動作するため重くて大きい。 
---例:[[シリーズ電源]]


*音声電圧を調整する [#o8c10b7c]

 スピーカー(2次側、巻き数少ない)と増幅器(1次側、巻き数多い)の間にトランスを挟むことにより、1次コイルに大きな電力が加わる。ここで巻き数比は10:1とする。スピーカーのインピーダンスが8であるとき、巻き数比の2乗に比例するので8×102=800に変換されたものと等価となる。結果として、トランスなしのときから比べて100倍(800は8の100倍)の大きな電力が取り出せる。 

 なお、音声電圧の周波数は低いので、この増幅回路に使うトランスを''低周波トランス''という。


*トランスの応用 [#g2530a4f]

**[[柱上変圧器]] [#feb45941]

-送電されてくる高電圧の電気を家庭用の電圧に下げる。

**[[自動車]]の点火系統 [#z358b17a]

-[[ガソリン]]を点火させるのは、約10,000Vの高い電圧が必要である。高電圧を点火プラグにかけて電気の火花を出し、ガソリンを[[爆発]]させる。
--この高電圧を作るのが変圧器の役目である。自動車の電源部のバッテリーは直流12Vであり、約10,000Vまで昇圧するために、2次コイル側の巻き数を1次コイル側の約800倍にもしなければならならい。しかも直流なので、交流のように連続的に電流を流すことはできない。そこで断続的に[[電源スイッチ]]をON/OFFさせる仕組みが必要になる。このために付けられているのが[[カム]]である。自動車ではカムの回転によってスイッチをON/OFFさせるのである。

**[[ACアダプタ]] [#yef8a219]

-家庭用の100Vの交流を、それぞれの機器が正常に動作する電圧の直流に変換する機能を持つ。

**家庭用の電気 [#l1e03469]

 家庭に来ている100Vを次に示す値に変換するのが電源トランスの役目である。 

-[[トランジスタ]]を使用した無線機:13.5V
-[[真空管]]を使用した無線機:300〜500V

**[[変電所]] [#kcf20e03]

-発電所で作られた何十万Vという高電圧の電気は、いくつかの変電所を通って徐々に低い電圧に変換され、最後に電柱の上にある変圧器((最近では地上に設置されているものもある。))で、100Vまで下げて各家庭に配られている。

*トランスの故障 [#tbdf8f1c]

-巻線の断線
--高周波トランスの巻線は細いので、湿気によって切れることもある。 
-レアショート
--電源トランスでは、巻線同士が接触したり、鉄芯とショートしたりすることもある。 
-過負荷焼損
--電源トランスは効率が100%ではなく、損失分だけ発熱することになる。この発熱そのものは異常ではないが、負荷をかけすぎたり、レアショートが起こったりすると異常に温度が上昇し、ときには燃えてしまうこともある。


*トランスの各種試験 [#ra9a2754]

**巻線抵抗の測定 [#a1e356a1]
-トランスの一次および二次巻線の抵抗は、各巻線に直流電流を流し、電圧降下を測定して求める。

**巻数比(変圧比)の測定 [#w6ee2091]
-トランスの巻数比は、一次巻線に適当な電圧VSUB{1};を加え、無負荷二次端子電圧VSUB{2};を測定して、近似的に次の式で求める。

&mimetex("\frac{V_1}{V_2} \approx \frac{E_1}{E_2} = \frac{N_1}{N_2} = a");

**極性試験 [#m3d827b8]

-減極性と加極性を判別する試験。
-トランスは単独で使用する他、負荷の増加に応じるため、いくつかのトランスを並列に接続して運転することがある。
--このような場合、「トランスの極性」、つまり「一次巻線と二次巻線の誘導起電力の相対関係」を知る必要がある。このようなときに極性試験が行われる。

[補講]一次巻線および二次巻線のいずれかで誤って逆の接続をしてしまうと、2台の変圧器の二次電圧の起電力が二次巻線によって形成される閉回路で同方向・直列に接続されることになる。

この場合、巻線のインピーダンスは小さいので、非常に大きな循環電流が流れて、巻線が焼損する。 ◇

-トランスの極性は、次の回路に示すように端子記号U,V,u,vの配置によって、減極性と加極性に分類される。

#img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image4/henatu_kyokusei.png)
#img(,clear)

-2個の電圧計VSUB{1};,VSUB{2};を用いて、一次端子U,Vから電圧を加えて行われる。

#img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image4/henatuki_kyokusei_siken.png)
#img(,clear)

その結果、次の判定により、減極性・加極性の判別が可能となる。

[1]VSUB{1};>VSUB{2};の場合、減極性(&mimetex("\dot{E}_1");と&mimetex("\dot{E}_2");が打ち消し合う)。

[2]VSUB{1};<VSUB{2};の場合、加極性(&mimetex("\dot{E}_1");と&mimetex("\dot{E}_2");が加わり合う)。

#divid(s,proof)
[補講]日本のトランスは、減極性が標準である。 ◇
#divid(e,proof)

**無負荷試験 [#w29bd040]

-無負荷損(鉄損)と励磁電流を測定する試験。
-二次側を開放し、一次側端子間に定格電圧VSUB{1n};を加えて、電力と電流を測定する。
--このときの電力計Wの指示PSUB{i};が無負荷損、つまり鉄損であり、電流計Aの指示ISUB{0};が励磁電流である。

#img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image4/henatuki_mufuka_siken.png)
#img(,clear)

**短絡試験 [#k5ba4174]

-負荷損(銅損)と短絡インピーダンスを測定する試験。
-二次側を短絡し、一次側に定格電流ISUB{1n};が流れるような電圧VSUB{1s};を加え、電圧・電流・電力を測定する。
--このときの電圧計Vの指示VSUB{1s};(これを''インピーダンス電圧''と呼ぶ)は、定格電流ISUB{1n};が流れているときの一次巻線と二次巻線のインピーダンスによる電圧降下を表している。
--電力計Wの指示PSUB{s};(これを''インピーダンスワット''と呼ぶ)は、定格負荷をかけたときの負荷損、つまり全負荷銅損PSUB{cn};を表す。
-変圧器の一次巻線と二次巻線の合成インピーダンス(これを''短絡インピーダンス''と呼ぶ)は、&mimetex("\frac{V_{1s}}{I_{1s}}");で求められる。

#img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image4/henatuki_tanraku_siken.png)
#img(,clear)

***%Z,p,qの計算 [#y333ac02]

-短絡試験により、トランスのパーセントインピーダンス%Z、パーセント抵抗p、パーセントリアクタンスqを求めることができる。

#img(http://security2600.sakura.ne.jp/main2/image4/henatuki_tanraku_siken2.png)
短絡試験時の等価回路(一次側換算)
#img(,clear)

&mimetex("%Z");~
&mimetex("=\frac{I_{2n} \sqrt{R_2^2 + Z_2^2}}{V_{2n}} \times 100");~
&mimetex("=\frac{a I_{1n} \cdot \frac{1}{a} \sqrt{R_1^2 + Z_1^2}}{\frac{V_{1n}}{a}} \times 100"); (∵巻数比=aより、&mimetex("R_1 = r_1 + a^2 r_2 = a^2(\frac{r_1}{a^2} + r_2)=a^2R_2, \, X_1 = x_1+a^2x_2 = a^2 X_2");)~
&mimetex("=\frac{I_{1n} \cdot \sqrt{R_1^2 + Z_1^2}}{V_{1n}} \times 100");~
&mimetex("=\frac{V_{1s}}{V_{1n}} \times 100 \, \[%\]"); (∵[[オームの法則]]V=IZより、&mimetex("V_{1s}=I_{1n} \sqrt{R_1^2 + X_1^2}");) ←(*)

&mimetex("p");~
&mimetex("=\frac{I_{2n} R_2}{V_{2n}} \times 100");~
&mimetex("=\frac{a I_{1n} \cdot \frac{R_1}{a}}{\frac{V_{1n}}{a}}");~
&mimetex("=\frac{I_{1n} R_1}{V_{1n}} \times 100");~
&mimetex("=\frac{I_{1n}^2 R_1}{V_{1n} I_{1n}} \times 100");~
&mimetex("=\frac{P_{cn}}{W} \times 100");~
&mimetex("=\frac{P_s}{W} \times 100 \, \[%\]"); ←(**)

よって、パーセントリアクタンスq[%]は次のように計算できる。

&mimetex("q");~
&mimetex("= \sqrt{%Z^2 - p^2}");~
&mimetex("= \sqrt{(\frac{V_{1s}}{V_{1n}})^2 - (\frac{P_s}{W})^2} \times 100 \,\[%\]"); (∵(*)(**))



*参考文献 [#cc171374]

-『電気のことがわかる事典』
-『見てわかるノイズの試験法と対策』
-『図解 はじめて学ぶ電気回路』
-『ラクラク突破の4類消防設備士解いて覚える問題集』
-『自家用電気設備の疑問解決塾』
-『電験第3種これだけシリーズぁ,海譴世泳ゝ』
-『改訂新版 電験第3種 ニューこれだけシリーズ これだけ機械』