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*目次 [#o083e868]

#contents


*指紋 [#e5cf04ea]

 人間の手のひらや指、足の指には、極めて細い浮き上がった線がある。これを''隆線''という。この隆線があるために、[[摩擦]]が発生し、指先でものを掴んだり持ち上げたりすることが容易になる。隆線の作る模様のパターンは、人によって異なる。仮に一卵性双生児であっても合致するものは存在しないことが知られている(1893年、Sir Francis Galtonによって発見された)。

 ''指紋''はこの隆線の形作るパターンが物体の表面に付着した跡のことである。我々の手や足の皮膚にある分泌腺(汗腺や皮脂腺)から汗や脂分などの液体が出てくるために、指紋が現れる。これらの液体は、人間が触ったほとんどすべての器物に指紋のパターンを残すことになる。

 指紋は犯罪現場に残る犯人の痕跡として最もポピュラーであり、裁判の判決を確定するほど研究され尽くしているので、警察機関においては指紋を犯人の認証情報として利用されている。


*指紋の歴史 [#i4fe74bd]

 指紋には人それぞれ異なることは何百年も昔から気付かれていた。実際、何世紀もの昔から、日本では拇印、即ち親指に朱肉をつけて紙に押すことで、文書が正式であることを認めていた。

 指紋が犯罪の証拠として取り上げられるようになったのは、19世紀末になってからのことである。

 指紋が犯罪解決に最初に応用されたのは、実は日本である。~
 1879年(明治12年)の話である。東京の築地病院にヘンリー・フォールズという外科の医師が勤務していた。フォールズ先生は日本の古代土器に鮮やかな指紋が記されていることに興味を持ち、また日本人が文書に拇印を押す習慣があることに気付いていた。あるとき、近くの家に泥棒が入り、塗ったばかりの白壁にはっきりと黒い指紋を残していった。警察は、フォールズ先生の平素からの指紋の研究をしていることを知ったので、早速このことを知らせた。しばらくして、犯人らしいならずものが捕まったので、フォールズ先生が指紋を採ってみたところ、白壁に残っていた指紋とは一致しなかった。その後、別の容疑者が捕まった。この容疑者の指紋がピッタリ一致して、見事に真犯人が逮捕されたのである。この成果を記念して、築地の聖路加病院の構内には「指紋学発祥の地」という記念碑が建てられた。


*警察機関と指紋 [#ef5a2e24]

 警察では犯人を逮捕すると、両手の計10本(まれに例外はある)の指の指紋をすべてカードに記録しておかれる。これを''十指指紋カード''と呼ぶ。

 新しい事件が起き、犯人が逮捕されて、その犯人が嘘をついたり、黙秘権を行使していたとしても、十指指紋カードを使うことで、過去に事件を起こしているのか、もし起こしているなら氏名などが判明する。


**指紋を証拠として使う3つの理由 [#r02f1f92]

・同一人物であることの証明、つまり個人のアイデンティティの確証

 犯罪を犯した人間が収監されると、指紋を採取して、他の人間の指紋とクロスチェックすることは難しいことではない。これによって、問題の人間が、以前に犯罪を犯したことがあるかどうか、あるいは警察から手配中であるかどうかを容易にチェックできる。

・収監された容疑者の指紋と、犯罪現場に残された指紋が同じかどうかを比較するのに用いられる。

・司法科学者が、犯罪現場に残された指紋と、すでに記録されている犯罪者の指紋とを比較するために活用される。


**顕在指紋と潜在指紋 [#r86f8df9]

-顕在指紋
--特別に何もしなくても現場にはっきりと残っている指紋である。
--例えば、犯人の手が泥やペンキなどで汚れていた場合、このタイプの指紋が残りやすい。
-潜在指紋
--化学薬品で処理したり、細かい粉末をかけなくては目で見ることができないタイプの指紋である。


*指紋の採取 [#u99db8a9]

**自発的に指紋を取る方法1 [#r50f4e55]

1:インクパッドに一本の指を押し付ける。このとき、あまり強く押してインキがベタベタにならないように注意する。

2:白い紙を用意して、手伝ってくれる仲間に頼んで、あなたの指を支えてもらい、ゆっくりと指の腹をを左右に廻して指紋を取る。

3:紙が乾くまで待つ。

4:紙が乾いたら、その下に名前と左右どっちであったのか、さらにどの指であったかを記述しておく。


**自発的に指紋を取る方法2 [#kbc8a31e]

1:小さな白い紙に、やわらかめの鉛筆で繰り返し黒く塗る。指の面積より大きくなるぐらいの黒い領域ができるようにする。

2:ここに指を押し付けます。皮膚に黒い鉛筆の粒子がつく。次の指の指紋をとる前に、もう一度鉛筆で紙を塗り、黒い粉を補給しておく。

3:手伝ってくれる仲間に頼んで、セロファンテープの粘着面を今の黒くなった指の表面にゆがみなく貼ってもらう。指1本ごとにこのステップ1と2の操作を繰り返す。

4:別の白い紙に、指紋を写したセロファンテープをきちんと伸ばして貼る。

5:その下に名前と左右どっちであったのか、さらにどの指であったかを記述しておく。


**微細粉末散布利用による指紋採取 [#t93b1827]

 潜在指紋の微細粉末散布に向いている指紋が残っている物体は、滑らかで平らな、かつ固い表面の場合である。

 一方、ガサガサの荒い表面や、柔らかくて容易に変形するような表面の場合は、粉末散布法はうまくいかない。そこで、次の項で説明する化学薬品を利用する方法がとられる。

 司法科学者が潜在指紋の検出に使う微細粉末としては、次が挙げられる。

|微細粉末の種類|概要|対象表面|
|ベジタブルブラック|細かい炭素の粉末|主に色の薄い表面|
|アルミニウムの粉末|細かい銀色の粉|暗色の表面|

 潜在指紋をもっとよく検出するために、鉛・カドミウム・銅・水銀などを含む薬品を混ぜて利用することもありる。

 また、散布する粉末に蛍光色素を混ぜておき、暗室で紫外線を当てはっきり光って検出を容易にさせることもある。


**科学薬品による指紋検出 [#aa7c3a2d]

 密封したビンの中でシアノアクリレート(アラルダイトやシアノアクリレートとも呼ばれて、売られている。強力な接着剤。アルミ箔の表面)が揮発し、潜在指紋(目に見えない指紋)のところにある水分と反応し、そこに固着する。時間をかけると、シアノアクリレートモノマーの分子がどんどん付着して固くなり、はっきり見えるようになる。


**指紋検出について [#rdccdadf]

-金属
--アルミの粉末をつけたうさぎの毛でできたハケでなでる。
-広告紙のようなツルツルした紙
--ビニール袋にいれて、ヨードガスを送り込む。
-コピー用紙のようなざらざらした用紙
--ニーヒドリンを塗り、スチームアイロンをかけると、タンパク質が浮き上がる。紫色が特徴。
-脂にまみれた拳銃などの金属
--強力な接着剤を底において、暖めて気化させて、それを吸着させればよい。
--例えば、暖めた金属板を強力な接着剤を塗り、水槽の下におく。そして、水槽の真中あたりに拳銃などを吊り下げておくと、指紋が表示される。
--誰でもできるし、FBIでもよく使われている。
-時間がたったもの
--磁気造影剤を利用。

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警察の鑑識などが使う本格的な指紋検出セット及び蛍光スプレーとブラックライト
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*指紋の分類 [#u9ca562e]

 指紋の分類する方法はいくつかある。ここでは、一番簡単な方法を試みる。ちなみに、もっと複雑な分類方式では、共通の指紋パターンをずっと小さなグループに細分して比較する。例えば、アーチ型の指紋(弓状紋)を単純弓状紋(滑らかな曲線)と突起弓状紋(鋭く曲がっている)に分けたりする。

[注意]有胎蹄状紋【ユウタイテイジョウモン】、早胎蹄状紋、二重蹄状紋らは、名称から見れば蹄状紋であっても、指紋分類上は渦状紋に分類されることになる。

 蹄状紋の隆線の場合、開口部が親指側にあれば甲種、小指側にあれば乙種と分類する。渦状紋も同様に細かく分類さる。


*マニューシャ [#h93cf59b]

 指紋照合は、指紋の線の切れ目を示す端点あるいは分かれ目である分岐点といった特徴点を判別対象とする。このような特徴を英語では''マニューシャ''という。マニューシャには「微小」という意味がある。指紋が万人不同で、同一の指紋を持つ人は双子でもいないということは、このマニューシャが各人各指で全て違うということである。


*コンピュータによる指紋照合 [#a5962e20]

 指紋照合とは、マニューシャを比べることであるが、それをコンピュータで自動的に行うには、各マニューシャの特徴が数値的に出す必要がある。そのために、指紋の画像処理が行われ、次にその特徴抽出という作業が行われる。


**原理 [#se46eff7]

 原理は次のようになる。

1:指紋の模様をCCD(半導体の撮影素子の一種)で縦横に約500個ずつ並べたテレビカメラで写す。対象となる指紋の面積はおよそ2.5cm四方なので、1つの画素の大きさは50ミクロン(1mmの20分の1)になる。指紋を50ミクロンごとのマス目に区切り、それぞれのマスの濃淡を8ビット(=256レベル)でデジタル的に表示させる。このとき、実際の指紋にはムラがあったり、傷がついていたりするので、コントラストを強めるなどの修正を加える。

2:隆線の方向を計算してはじき出す。方向は8画素ごとに8方向の濃淡編かを計算することではじき出す。ここが一番重要な作業であり、将来的にさらなる改善点や高速・効率的なアルゴリズムが求められる。

3:マニューシャの特徴抽出を行う。

 まず、マニューシャが隆線の端点か分岐点かを分類する。

 さらに、中心点を出して、指の頭の方向で決められるXY座標軸上のマニューシャの位置が決定されます。その上で、その点での隆線の方向を定める。

[補講]国によってはマニューシャの場所と隆線の方向だけで照合をしているところもある。


**リレーションによる照合原理 [#d180e3f1]

 指の皮膜は柔らかいので、指紋の変形は時と場合によって大きく出る。そのため、マニューシャの位置と方向だけで判断しようとしてもうまくいかない。そこで、マニューシャの間の隆線数を用いて判断するアプローチもある。これがリレーションによる照合原理である。


**AFIS [#b93e8dfd]

 かつては指紋の識別や同定は、専ら人手に頼っていた。しかしこれでは時間がかかってしまう。現在では、コンピュータが利用され、膨大な指紋ファイルの検索・比較が可能となった。このようなシステムは''自動指紋同定システム(AFIS:Automatic Fingerprint Identification System)''と呼ばれる。このシステムによって、指紋の照合ははるかに短い時間ですむようになった。

 しかしながら、AFISにも問題がある。それは当然のことですが、指紋が登録されているものしかチェックできないということである。例えば、アメリカ全土には2億5千万人ほどの人間が暮らしているが、指紋登録されているのは1千万人ほどしかないのである。よって、いくら精巧なシステムがあったとしても、万能とはいえないのだ。


*指紋認証システム [#m0ae7783]

**指紋認証システムはどうやって指紋のデータを取るのか [#k9fbf20a]

 システムの走査装置は指を押し当てるところがガラスでできているので、光を当てると指紋がガラスにくっついているところは光が乱反射して、指紋がついていないところは光が反射して白く見えることを利用して、指にインクを付けて捺印しなくても指紋が読み取れる仕掛けになっている。


**指紋認証システムの問題点 [#u7fd1457]

・手が汚れていたり、汗を掻いたり、カサカサしすぎたりすると読みこみ不可になる。あくまで、誤判定ではなく読み込み不可になるので、最小限の被害で食い止めることができる。

・照合に要する時間が問題になる。例えば従業員の勤務時間管理のために正門に指紋認証システムを導入したとき、毎朝わずかの時間に何百、何千人もの人の指紋を照合しなければならない。その場合、一人の指紋照合に5秒もかかっていては話にならない。

・潔癖症の人にとって苦痛。


**指紋認証システムの応用 [#j470ecad]

-Windowsのログオンパスワードの代わり
--指紋認証デバイスがデフォルトで内蔵されているノートPCも販売されている。
-携帯電話のパスワードの代わり
-キャッシュカードから現金を下ろすときの認証


*参考文献 [#yb179757]

-『科学テクニックで名探偵になろう』
-『犯罪心理学 行動科学のアプローチ』
-『ポピュラーサイエンス 犯罪鑑定の科学』
-『これが認識技術だ 指紋・音声・文字』
-『暗号と情報社会』