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*目次 [#n746a52b]

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*発掘現場での人骨調査 [#i3dbc244]

**取り上げる前 [#d914913b]

1:実際に遺構(昔の建築の残骸物)から人骨が出土したら、その状態がある程度わかるまで彫ってみる。 

・姿勢、どの部分がどの程度残っているのかという状況を把握しておく。 

・人骨のある部分だけを集中的に掘ってしまったり、埋まっている骨の上に乗って体重をかけてしまい、結果的に骨を壊してしまう事態は避ける。常に全体を見ながら広く薄く発掘するのがコツである。 

2:墓の大きさからどのような人骨が出土しそうか考える。 

・比較的小さければ子供や焼骨、さらに小さい場合は屈葬埋葬の人骨が埋まっている可能性が高い。 

・細長い墓の場合は伸展葬の姿勢で埋葬されている可能性が高い。 

3:一般に伸展葬で埋葬された人骨の場合、掘り進めてゆくと最初に頭蓋骨が出てくる。これに対して、屈葬埋葬された人骨の場合は、発掘していくとまず膝蓋骨に触れることが多いといわれている。 

4:近世の埋葬遺構に多い座棺姿勢(早桶の内部に座った状態)で埋葬された被葬者の場合も、頭蓋骨が最初に出てくることが多い。 

5:発掘にあたっては、実測や写真撮影などの記録をとりつつ、こうした記録作業の進行状況に合わせる形で、少しずつ土を除去していく。 

・写真は、人骨全体が俯瞰できる状態と、さらに人骨の細かな部位の状況確認できるように各部を接写した状態でそれぞれ複数撮っておく。 

・特に屈埋位の場合は、肋骨や脊椎などの体幹骨と手足の骨が一塊になっていることが多く、どこがどの部品かを判別できるように記録することが大切である。 

6:出土状態は、必ず図面にとる。よく観察して見たままを図面におさめる。 

・人類学では一般的に、出土人骨の実測は、1/10のスケールが望ましいとされる。 

・図面はなるべく正確に頭の向き(頭位)や埋葬姿勢なども見ただけでわかるように記録する。 

・図面は一方向だけではなく、見通しの状態も取るようにしておくと、後々その図面を活用したくなる。 

7:人骨には直射日光や雨が大敵である。

・人骨が出土したら、できたら仮設テントをはって、人骨に日光や雨が直接あたらないようにする。 

・日光による乾燥、あるいは雨水によるノリ状化などはいずれも骨の保存を著しく悪化させてしまう。 

・出土した人骨は、現地に放置することなく、図面や写真撮影などの作業が済み次第、なるべく早急に取り上げるようにする。 

8:出土人骨を取り上げる方法は、他の遺物の場合とそれほど大きく異なっているわけではない。 

・取り上げの際には、個々の骨がそれぞれどの部分と繋がっているかを考えながら作業する。 

・大切なのは、右手は右手、左手は左手というように、左右の骨が混じらないように取り上げる。 

・手や足の末節骨のような小さな骨は見落としやすいので、取り上げに困難が伴なう。気づかずに現場に忘れてしまう可能性もあるので注意。 

・もし、どうしてもきちんと取り上げるだけの時間がなかったら、左手と右手の各部分を土ごと取り上げて、現場外に持ち出してから、室内などで発掘するという手もある。 

・個体識別は、個々の骨の保存状態、または骨の色調などが手がかりとなることがある。 

 
**取り上げ方 [#y699ac32]

・取り上げた骨は、新聞紙に包む。

 新聞紙は安価で入手しやすい。さらに、骨が保持している水分(湿気)を保管中に吸い取ってくれるという利点がある。 

・新聞紙に包んで乾いたら(普通は約2〜3ヶ月後)、土落としなどのクリーニング作業を実施する。 

・少し時間が経った後でクリーニング作業をすると、人骨についた泥は、竹串などで簡単に取れるので作業が楽になる。 

・包むのは、左上腕骨、右大腿骨というように、部位ごとに行う。 

・ラベルには部位、遺構名、遺跡名などを書き入れておく。 

・取り上げた人骨がかなり濡れていた場合は、新聞紙を数回取り替える必要がある。この作業を怠ると、湿度の高い日本のような気候では、取り上げた人骨にカビが生えてしまう。 

・新聞紙にくるんだ人骨だけをそのままダンボール箱などに詰めないようにする。 

・箱詰めする際には、クッションになるようなものが必要。輸送中に人骨が壊れるのを防ぐためである。 

・梱包剤としては、一般的に綿や新聞紙を丸めたものなどが使われる。 

・線は、特に濡れた状態で出土した人骨の場合には不向き。というのも、綿は湿気を吸い、骨にくっついてしまうことがあるからである。一旦綿が人骨にくっついてしまうと、これを人骨から除去するのに苦労する。 

 
**人骨に合成樹脂を塗る [#z0887931]

・合成樹脂を一度塗ると2度と取れなくなる。そのために、合成樹脂を塗るなら、人骨の保存状態や今後の資料の活用などについて十分に考慮してから塗るようにする。 

・乾いた状態の人骨には、ビニル系の合成樹脂ビュットバルを塗布したり、噴射したりするのがよい。 

・アクリル系の合成樹脂パラロイドB72という選択もあるが、アクリル系の合成樹脂はビニル系の合成樹脂に比べて強度が高いので塗布する対象である人骨の状態によっては強すぎることがあるのでオススメできない。 

・多くの合成樹脂は、水を弾く性質(撥水性)を持っているので、塗布・噴射の際には注意が必要。 

・濡れた人骨に撥水性の高い合成樹脂を塗布・噴射した場合は、人骨の表面のみにはりつき、人骨内部にある水分を閉じ込めてしまうだけになる。 

・塗布する合成樹脂の適切な濃度は、個々の出土人骨によって様々であるが、最初は比較的薄めの濃度(0.5〜5%)のものを使うとよい。可能ならば、薄い濃度のものから濃い濃度のものへと徐々に塗布していくようにすると理想的。 

・人骨に付着した合成樹脂はDNA分析の障害になる。

**埋蔵環境 [#v2227516]

・人骨の周りの土も採取する。人骨の保存状態・遺存状態を把握する上で、欠かせない。 

 周辺環境のひとつである土壌のpHや含水率などが、人骨の保存状態・遺存状態を大きく左右する。 

・人骨が良好な状態で出土するためには、土壌のpHが中世またはややアルカリ性である必要がある。日本の土壌は一般的に酸性なので、良好な状態で遺存するのは難しい。 

・人骨が良好な状態で出土するためには、水分の状態も重要。乾いているとミイラのように軟部組織を伴なった遺体を見つけることもありえる。この場合は、水分が非常に少ない状態が理想的といえる。 

・骨の保存には、水分同様に酸素も重要な要素である。無酸素状態であると、乾燥状態と同じく微生物の活動が抑制されて人体が残りやすい。 

 
*参考文献 [#o0fba7b4]

-『考古学のための古人骨調査マニュアル』